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4-1:午前9時のシャワールーム (7)

やばい。 俺の口の中でピクピク震える理人さんや、俺の下で喘ぐ理人さんや、俺のキスを欲しがる理人さんを思い出していたら、ランニングウェアの下でそれがむくむくと存在を主張し始めた。 まるでその熱に反比例するように、汗にまみれた身体がどんどん冷えてきている。 ああ、寒い。 リビングのエアコンのスイッチを入れ、手を伸ばして温風が出てきたのを確認する。 ひとつ身震いしてから、俺は踵を返した。 キッチンのちょうど裏にあたる場所に、脱衣所がある。 扉を開けて中を覗くと、奥にあるバスルームの電気が点いているのが見える。 磨りガラス越しに、肌色の影がぼんやりと浮かび上がっていた。 理人さんだ。 床に脱ぎ捨てられたパジャマを避けながら歩み寄り、曇ったガラスの扉を、二度、軽くノックした。 「理人さん?」 返事がない。 仕方なく、もう一度ノックしてみる。 今度は、ちょっと強めに三度。 「理人さーん」 また返事がない。 どうしよう。 汗が完全に冷える前に、シャワーを浴びてしまいたい。 このまま突入したら怒るだろうか。 怒るだろうな。 でも、このままじゃ風邪を引きかねない。 いいや、入ってしまおう。 理人さんがあまりに嫌がるからまだ一緒に風呂に入ったことはないけれど、今さら隠すものなんて何もないし、恥ずかしがる理由もないはずだ。 俺は、ランニングウェアを脱ぎ捨てて、生まれたままの姿になった。 重い扉をゆっくりと押し開けると、白い空気が一気に流れてくる。 もくもくと立ち込める湯気の向こうに、キョトンと目を丸くした理人さんがいた。 「お邪魔しまーす」 「え、えぇっ!?ちょっ、かっ、勝手に入ってくるなよ!」 「いいじゃないですか、広いんだし」 「そういう問題じゃない!」 憤慨する理人さんの両手が、胸元と股間を行ったり来たりしている。 どっちを隠すべきか分からず、パニックになっているようだ。 結局、上と下を片方ずつ押さえながら、理人さんが一歩後ずさった。

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