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4ー4:午後10時のハッピーバースデー (4)

視線をずらすと、理人さんが上半身をわずかに起こし、上気した頬を歪ませて苦しそうに肩で息をしている。 「も、やばい……っ」 「え……?」 「イ、きそうっ……」 「えっ!」 え、もう? 早くないか? ちょっとキスして、ちょっと舌吸って、ちょっと乳首弄って、ちょっと手で気持ちよくなってるだけじゃないか。 それだけで? いつもの理人さんなら、こんなに早く……あ。 「明るいままだから、いつもより感じてます?」 「……は?」 「イきそうになるのがいつもより早いし、声もいっぱい出てる」 「っ」 理人さんが、ふるりと身体を震わせ、これでもかと顔を真っ赤に染めた。 「だ、だからっ……いちいち、言うな……っ」 ……あ。 ああ。 あああああああ。 やばい。 かわいいなあ。 かわいい。 人がこんなに必死で理性を保とうとしているのに。 俺の葛藤なんて気づきもせずに平気で煽ってくるんだもんなあ。 そんな濡れた瞳で睨んでも、まったく逆効果だとも知らずに。 「じゃあ、とりあえずイッちゃってください」 「とりあえず、って……あ、ちょ、やっ……!」 身を屈めてそれを口に含むと、理人さんの身体が弓なりにしなった。 「そ、んなの、いいからっ……んんんっ」 「なんで目、瞑ってるんですか」 「だってっ……見てなんて、られ、ないぃ……っ」 「エロすぎて?」 「あっ、しゃべるなっ……あっあっ!」 無意識に逃げようとする理人さんの腰を引き寄せる。 「さ、佐藤くんっ……ん、んんっ……」 「ふぁい?」 「あっ……もっ……出るぅっ……!」 理人さんの身体が、大きく痙攣した。 半瞬遅れて、口の中に精が吐き出される。 脈打つように溢れてくる白い欲望が、あたたかく俺の舌を犯した。 俺は、この瞬間が好きだ。 小刻みに震える身体をベッドに預け、理人さんが俺を探す。 求めるように視線を彷徨わせ、そのうつろな瞳に俺の姿を映し出す。 慈しむように、細められる瞳。 その中に、俺がいる。 まるで、理人さんの世界に俺だけが存在しているような。 そんな瞬間が、大好きだ。

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