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4ー4:午後10時のハッピーバースデー (9)

明らかになにか良からぬことを企んでいる顔で、理人さんが姿勢を正す。 やっぱり、背筋がまっすぐに伸びていてすごくかっこいい。 こんな風に素っ裸じゃなくて袴姿だったなら、もっとかっこいいに違いない。 もちろん、左手で俺のを鷲掴みしている……なんてことがないのは、大前提だ。 「ちょ、理人さん!?」 「ネットで調べたとかまたかわいいこと言いやがって」 「えっ?あ、ちょっ……」 「散々焦らされてもう限界なんだよ。今すぐお前をよこせ」 「あっ!」 理人さんがいきなり舌で先端をペロリと舐めた。 半分萎えかけていた俺の欲望がむくむくと起き出して、理人さんを喜ばせる。 まるで憧れのヒーローに会った子供のように、全身を震わせ瞳を輝かせた。 その繊細な指で俺を愛撫し、流れるような動作で口に含む。 暖かく湿ったそこは、淫らな音を立てながら上下し、俺の呼吸を乱した。 なんなんだ。 いったいなにが起こってるんだ。 なんで理人さんが俺の上に乗っているんだ。 さっきまでの理人さんはどこに行ったんだ。 ――俺を抱いて。 理人さんは確かにそう言った。 まさか、俺の妄想だったのか? 「硬くなった……!」 なるに決まってるだろ! 俺の心の言葉が外に出る間も与えず、理人さんが身体を折って俺の口を短く吸った。 重力がかかり、唇と一緒に鼻が押しつぶされて、息ができなくなる。 ゆっくりと上半身を起こした理人さんの右手には、銀色に反射する四角い何かが握られていた。 白い包帯と、アルミ色に光るそれが、とてもアンバランスだ。 ジッとその手元を見ていると、理人さんが顎を上げ、俺を遥か遠くから見下ろす。 そしてゴムの袋をそのまま口に咥えると、歯で噛み切った。 なんだその無駄にかっこいい開け方! エロい。 エロすぎる! 「う……!」 理人さんが、俺の上に乳白色のコンドームをかぶせる。 両手の指先を使って絶妙な強さで圧迫されて、首筋がゾクゾクした。 「もともと誕生日プレゼントって体だったしな。望みどおり俺をやるよ」 ギチギチと固められヒクつく俺自身を見下ろして、理人さんが満足そうにと笑う。 そして、いつの間にか手にしていたボトルの蓋を開け、中の液体をドロリと垂らした。 初めての感覚に思わず漏れそうになる声を、必死に飲み込む。 理人さんはそんな俺に気づいているのかいないのか、泥遊びでもするかのように全体に塗りたくった。 ぬちゃぬちゃという音がいやらしい。 ああ、せっかく巻き直した包帯がローションでベタベタじゃないか。 「こんなもんだろ」 理人さんは、ローションの容器をぽいっと投げると、腰を上げて膝立ちになった。 そのまま少しだけ上にずれてくる。 天を目指すようにそそり立った理人さんのそれが、ふるふる揺れた。 思わず腕を伸ばして、そっと触れる。 理人さんの喉の奥からくぐもった声が漏れ、欲望の先端にぷくりと透明な露が生まれる。 俺を見下ろす理人さんの瞳が、まばたきを忘れたように動かなくなった。 動かそうとした俺の手が、ざらりとした何かに捕まる。 理人さんの右手が俺の動きを制し、左手は手探りで俺のペニスを探り当てていた。

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