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4ー4:午後10時のハッピーバースデー (13)

初めて知った。 上がりすぎた熱が冷めた後の肌は、重なるととても気持ちいい。 「手、大丈夫ですか?」 「手より心配するところがあるだろ……」 おしりいたい、と小さく零して、理人さんが、唇で勾配の急なへの字を描く。 そっと背中をさすると、もぞもぞと身体を動かしてすり寄ってきた。 ピトッとくっ付き、俺の両腕を持ち上げて自分の背中に回す。 なんだこのかわいい生き物は。 「大丈夫ですか?」 「……ん」 「理人さんは、その、初めてじゃないですよね?」 「あー……うん。でも、しばらく、なかったから」 「しばらくってどれくらいですか?」 「二年……いや、三年くらい、か」 「そんなに!?」 「相手がいなかったんだ。しょうがないだろ」 「でも理人さんならそれこそ男でも女でも選び放題じゃないですか」 「そんなの……好きじゃなきゃ、やだ」 あれ。 俺は試されているんだろうか。 理人さんにぎゅうぎゅう抱きつかれて嬉しいけれど、心から嬉しいけれど、嬉しすぎるから、下の方が反応してしまう。 さすがに今夜はもう何もしないつもりなのに。 「理人さん、ちょっとだけ離れ……うわ、包帯がベタベタだ」 「あー……」 「シャワーしたらまた変えましょう。ばい菌入ったら大変だし」 「うん。でも……もうちょっと」 理人さんが、 腕の中から上目遣いで見上げてくる。 額に口づけを落とすと、気持ち良さそうに目を瞑った。 なんだか今夜の理人さんは、小さな子供みたいだ。 「佐藤くん」 「はい?」 「誕生日、おめでとう」 「ありがとうございます」 「いくつになったんだ?」 「俺は子供ですか。27です」 「……ふぅん」 「理人さんは?」 「30。今度で31」 「えっ……えぇっ!?」 「それはどっちの驚きだよ」 「や、それくらいかなとは思ってましたけど、ほんとにそれくらいだとは」 「なんだそれ?」 「だって、こんな可愛くて30とかダメでしょ」 「っ」 途端に理人さんが真っ赤になって、俺の胸に額を押し付けてきた。 「かわいいかわいい言うなよ……」 うん、かわいい。

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