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4ー4:午後10時のハッピーバースデー (14)

たぶん、理人さんを形容する言葉としては、『かっこいい』がダントツでよく使われているんだと思う。 俺もあのアイス爆食い事件まではそう思っていたし、今も就業時間中の理人さんはすごくかっこいい。 だからこうやって、子供みたいに甘えてくれる理人さんのかわいい姿を見られるのが俺だけなんだろうと思うと、たまらなくなる。 心の奥から言葉にならない感情がふつふつと湧き上がってきて、爆発しそうになる。 抱きしめる腕にぎゅうっと力を込めて、理人さんとの距離を限りなく0に近づける。 鼻先をかすめる細い髪に、僅かにシャンプーの香りが残っていた。 思わず鼻を鳴らして味わっていると、くぐもった声が、変態、と俺を罵った。 少し笑ってから、尖った唇に触れるだけの口付けを落とすと、今度は、たらし、と囁かれた。 「ひどいなあ」 わざと拗ねて見せると、理人さんの視線が右往左往する。 うん。 ほら。 かわいい。 「あの、さ」 「はい?」 「引き出し、一番上」 「え?」 「入ってる……誕生日プレゼント」 「えぇっ!」 「やっつけだからラッピングとかしてないけど」 「そんなの関係ないです!開けていいですか?」 「……ん」 驚きを隠せない俺から、理人さんが決まり悪そうに視線を逸らした。 踏みつぶしてしまわないよう理人さんの身体を避けながら、ベッドの上を移動する。 心臓の鼓動が大きくなりすぎて、全身を揺らしている気がする。 だってまさか、プレゼントまで用意してくれていたとは思わなかった。 サイドボードの一番上の引き出しは、少し突っかかってから開いた。 ガタガタと左右に揺らしながら引っ張ると、中には黒くて四角いものが、ぽつん、と入っていた。 端っこには、小さなトフィのキーホルダーがついている。 え。 えっ? ええっ!? これって、もしかして……! 「その、キーホルダーは佐藤くんが好きに付け替えて……」 「理人さん!」 「あいっ……ててててて!」 衝動のまま思いっきり飛びつい俺の下で、理人さんが大きく身をよじる。 しまった。 右手!

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