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裏閑話:午後2時の目撃者 (2)
「うわあっ!?」
あっ、カルボナーラさん!
いつの間に!
ぷぷぷ!
佐藤くん、動揺しすぎ!
「……おはよ」
「お、おはようございます、理人さん」
ふんふん、なるほど。
カルボナーラさんは、まさとさん、って言うんだ。
今朝も、ものすごく眠たそう。
でもフラフラなのにこうやって毎朝立ち寄るってことは、よっぽど佐藤くんに会いたいってことなんだよね、きっと。
「……コーヒーでかいの、ひとつ」
「は、はい」
でかいの。
でかいの、って言った、今!
かっわいー!
カルボナーラさんって、パッと見はすっごくイケメンで仕事できそうでかっこ良いって感じだけど、ちょっとした仕草がけっこうかわい……えっ?
なんか、ものすごくチラチラ見られて――あ、そういうこと!
もう、わたしったら……気が利かなくてごめんなさい。
心の中でニヤニヤしつつ、自然な感じを装ってその場を離れる。
ギリギリ会話が聞こえる距離でカウンターの上を整理し始めると、カルボナーラさんがこっちをチラッと確認してから、控えめに口を開いた。
「……佐藤くん」
「はい?」
「あー……昨日はありがとう」
「えっ」
「て、言いたかった、だけ……楽しかったから」
「……はい。俺も、楽しかったです」
うわあ、佐藤くんがデレッデレだ。
しかも、それを少しも隠そうとしないところが佐藤くんらしい。
「今日はなに食べたいですか?」
「あー……なんだろ……?」
「プッ、起きてますか?」
「……寝てる」
佐藤くんの手が、ゆっくりと動いて……あっ、撫でた!
カルボナーラさんは、色の綺麗な髪をこれでもかと乱されながらも、身体を揺らしてされるがままになっている。
その表情がとても穏やかだ。
「そんなんで仕事大丈夫ですか?」
「だって、佐藤くんが昨夜……あーいや、なんでもない」
昨夜?
昨夜ってなに!?
ああああ〜、気になる!
ふたりの会話に混じれないこのもどかしさ!
誰かわかって!
「あとでLIMEするんで、それまでに食べたいもの考えておいてください」
「……わかった」
「はい、コーヒー」
「ありがとう。また……あとで」
「はい。仕事、がんばってくださいね」
「……ん」
ん、だって。
ん、だって!
あ、行ってしまう。
待って!
待って〜!
いろいろ聞かせて!
佐藤くんとのアレやコレを根掘り葉掘り聞かせてぇ〜!
わたしにネタをちょうだい〜!
「ねえ、佐藤くんとカルボナーラさんってどっちが受けなの!?」
いっそのこと、そんな風に叫んでしまいたい!
わたしの予想通りだとすると、佐藤くんが攻めで、カルボナーラさんが受け。
でも、カルボナーラさんがベッドの上で野獣のように激しくなる可能性も捨てきれないし、
それはそれでアリだと思う。
うん、ものすごくアリ。
むしろ佐藤くんがカルボナーラさんに攻めに攻められて、もう無理です理人さんっもうやめてくださいっ……とか懇願しちゃうのも萌え――
「宮下さん?どうしたんですか?」
「……」
「宮下さん……?」
「大丈夫、なんでもない」
作りたて笑顔を貼り付けて首を振ると、佐藤くんはあっさりと仕事に戻った。
自分とカルボナーラさんがわたしの妄想に付き合わされてることも知らないで。
ふふ……ふふふふふ……ふふふふふ!
今日のところはこれくらいにしといてあげる。
どっちにしても、
「困った時に相談できるお姉さん役、ゲットだぜ……うふふ」
わたし、宮下果梨 、30ウン歳。
腐女子歴、20年弱。
将来の夢、BL漫画家。
現在、春のイベントで出す新刊のネタを目を皿のようにして探し中。
「決めた。コンビニ店員×エリートリーマンにしよっと!」
fin
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