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5ー1:午後0時の乱 (10)

「んっ、あっ、はぁっ……」 湿気の粒に吸い付くように、理人さんの口から漏れた甘い吐息があたりを漂う。 水栓を限界まで捻ったシャワーは、浴室の狭い空間をあっという間に湯気でいっぱいにした。 勢いよく降ってくる暖かな雨が、理人さんの冷えた肌を強く打つ。 ほんのりと桃色に染まった上半身が、小刻みに震えた。 「理人さん、大丈夫?寒い?」 「うん……っ」 「もっと俺にひっついて」 逃げがちだった細い腰を引き寄せると、ぐちゅ、と水音が漏れた。 一気に根元まで飲み込まれた指を中で動かすと、理人さんが苦しげに喘いで俺に抱きついてくる。 熱いシャワーを滝のように浴びているのに、触れ合った肌は、まるで冷蔵庫から出したばかりのように冷たい。 「いったい、いつから待ってたんですか」 「佐藤くんにっ……会いたい、って思った時から、あっ、あっ!」 曇った鏡に映った理人さんのシルエットが、大きく仰け反った。 コリコリしたそこを指の腹で擦ると、理人さんの膝がガクガクと揺れる。 跨られた膝を開いて見下ろすと、理人さんのそれはもう透明な雫を垂らしながらいやらしくヒクついていた。 俺の指の動きに合わせて、ピクン、とそれがかわいく揺れ、イイところを擦れば、後ろがきゅうきゅう締め付けてくる。 引き抜く寸前で二本の指を左右に開くと、理人さんがいやいやと首を振った。 「あっ、やだっ……拡げるなぁっ……!」 かわいい。 いじらしい。 今にもこぼれそうな涙も。 真っ赤に染まった頬も。 縋り付いてくる腕も。 快楽に忠実なそれも。 すべてがかわいい。 すべてがほしい。 俺のものに――したい。 「理人さん、もう、挿れていい?」 無意識なのだろう、理人さんがまたふるふると首を振る。 それでも昂ぶった俺自身をあてがうと、一瞬強張った入り口はすぐに柔らかく蕩け、俺の先端を飲み込んだ。 「んっ、あ、あ、あ……っ」 理人さんが腰を落としているのか、俺が下から突き上げているのか。 その、両方なのか。 よくわからないまま、俺のペニスがズブズブと飲み込まれては、また引きずり出される。 理人さんとのセックスは、いつだってものすごく気持ちいい。 理人さんの中に俺のが入っている。 理人さんが俺を受け入れてくれている。 恥ずかしい姿を、俺だけに晒してくれている。 そのことを理解しただけで、イッてしまいそうになる。 「あ、くっ……ぅ」 「理人さん?痛い……?」 「ちがっ……まえ、擦れて、も、やば……っ」 なにかを堪えるように、理人さんがぎゅっと目を瞑る。 ああもう。 やっぱりずるい。 かわいい。 「イキたい?」 「っ……や、だっ」 「イキたくない?」 「佐藤くんと一緒がいっ……あ、あ、あ、あっ」 ふるふると左右に揺れる頭に気づかないふりをして、理人さん自身を握り込んだ。 その手を素早く上下させると、理人さんの目から涙がポロポロとこぼれだす。 「さ、佐藤くんっ、や、やだっ、あっ、ああっ……も、イく、イくぅ……!」 「くっ……!」 俺たちは、震える身体を強く抱きしめ合いながらイッた。

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