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閑話:午後7時のジェラシー (1)

自分のアパートに帰る夜、佐藤くんは決まって俺に背を向けて着替える。 まるでその広い背中で俺に謝っているようだ。 俺は、佐藤くんの背中が好きだ。 佐藤くんが腕を動かすたびに、質の良い筋肉が隆起してそのたくましさを強調する。 思わず腕を伸ばしてそっと触れたくなるのを、唾を飲み込んで堪える。 同じベッドで眠る夜、ふと目が覚めて不安に苛まれても、その大きな背中に腕を回すと安心した。 佐藤くんの背中は、すごく男らしくてすごくかっこいい。 だから、好きだ。 でも。 俺のより少しだけ濃い肌色が服に覆われていく過程を見るのは……嫌いだ。 「今夜は帰るのか?」 「明日、バイトなんです」 「……ふぅん」 腹ばいのままだった身体を起こすと、ベッドが小さく鳴いた。 佐藤くんが、半裸のまま振り返る。 そして、困ったように目尻を下げた。 「そんなかわいい顔しないで。帰れなくなる」 「なら、帰るなよ」 「明日、バイト終わったら全力で走ってきますから」 「……ん」 佐藤くんの唇が、そっと俺の吐息を奪った。

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