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閑話:午後5時のノスタルジー (1)
佐藤くんが、クローゼットの奥から俺の高校時代の制服を見つけた。
それ以来、ものすごく――
「だめですか?」
「だめだ」
「どうしても?」
「どうしても!」
「泣いて頼んでも……?」
「……」
――しつこい。
「なんでそんなにこだわるんだよ?」
「だって理人さんの制服姿見たい」
「だから卒アルで……」
「生で見たい」
佐藤くんが、ハンガーにかかった制服を俺の前にずずいと差し出してくる。
それを手で押しのけて、期待のこもった視線を向けてくる佐藤くんを睨んだ。
「お前な、俺をいくつだと思ってるんだ」
「さんじゅ……」
「普通に答えるな!今の俺が高校の制服なんか着たら、ただのコスプレになるだろ!?」
「そんなことない。絶対似合います!」
「似合うか!」
「似合います!だから着てみてください!お願い!」
「嫌だ!」
「一回だけ!」
「絶対に嫌だ!」
お互いに荒れた息遣いを隠そうともせず、負けるもんかと半ば意地になって睨み合う。
すると、佐藤くんが、つい、と視線を逸らした。
「……ずるい」
「なにがだよ」
「木瀬さんは毎日見てたんでしょ……?」
……ああくそ。
その顔はやめろ。
「ずるいのはその言い方だろ……」
俺は、肺の底からすべての空気を押し出した。
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