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閑話:午後10時の約束 (2)

「気持ち、よくない?」 「へ……?」 「集中してない」 理人さんが、俺の脚の間からしかめっ面で俺を見上げてくる。 「いやもうどうにかないりそうなくらい気持ちいいですけど」 「けど?」 「う……!」 隙を突いて先端を吸われ思わず呻くと、理人さんはニヤリと嫌な笑みを浮かべた。 赤い舌を広げて、まるでコーンのアイスを舐めとるようにペロペロしてくる。 放っておけば『三度の飯よりアイス』な理人さんだ。 このもはや腹立たしささえ感じるほど巧みな舌技も、たくさんのアイスを犠牲にして得た奥義に違いない。 「あっ……!」 唐突にふたつの袋を鷲掴みされ、変な声が出た。 「もう……わざとやってるでしょ」 「だったら?」 理人さんはまた、歯を見せずに口元だけで笑った。 いつもは羞恥に震えている瞳が、今夜ばかりは本能をむき出しにして俺を誘惑してくる。 俺も理人さんも、まだきっちり服を着込んだままだ。 何度も肌を重ねて理人さんの身体の隅々まで知っていると自負すらしているのに、薄い布の下に隠れた裸体を想像するだけで興奮してくる。 「んっ、あ、ちょ、理人さん……!」 眼前にふわふわと浮かんでいた理人さんのお色気姿・イン・もこもこの吹き出しは、股間に直接与えられた刺激を前にすぐに吹っ飛んで消えた。 ご奉仕、なんて言ったら理人さんにまた「このエロオヤジ!」なんて怒られちゃいそうだけど、もし理人さんが戦国時代に生まれていたらあちこちの殿様があの手この手で理人さんを自軍に引き入れようとしただろうな。 もちろん、夜伽相手的な意味で。 そう思うくらいには、ご奉仕感が強い。 それに、上手い。 ものすごく。 「……また、考えごと」 「え?」 「やっぱ、気持ちよくないんだ」 理人さんはぷくりと頰を膨らまると、いきなり俺の横っ面を甘噛みした。 「あっ……!」 「んっ……んっ……」 「ちょ、ちょっと!くっ……ぅ……」 絶妙に強弱をつけながら上から下から右から左までハムハムされ、一気に気持ちが昂ぶってくる。 透き通った情欲を垂らし始めたそれを、理人さんが喉の奥まで咥え込む。 素早く頭を上下させながら、根元は左手で握って扱くという合わせ技に打って出た。 「うわっ……あ、ふ……っ」 スペシャルコンボで早くもボッコボコにされつつある俺の手が、無意識に動いて理人さんの髪をひと束掴んだ。 理人さんが、無邪気に微笑んで俺を見上げる。 俺のペニスをしゃぶりながら。 こんな光景、達さずにあらざるべきか。 嗚呼、だめだ、日本語、無理。 「あっ……く――っ」 俺は、理人さんの口にこれでもかと精を吐いた。 それを全部受け止めて、理人さんが苦しげに顔を歪める。 いつものように逡巡し、ゴクリと喉を鳴らす――前に、閉じていた口を開けた。 そして、耐え切れないといった様子で舌を突き出した。 あろうことか、トロみのある重たい雫を、デローン……と俺の腹に垂らしながら。

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