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閑話:午後10時の約束 (3)
「……まず」
カッチーン。
「なんかいつもより濃くて……あ?」
グルンと立場を入れ替えると、理人さんの眉間に悔しさが刻まれた。
「やっぱりこっちの方が落ち着きます」
「ん、ぅ」
上下に合わさった股間を擦り付けると、理人さんがかわいく呻いた。
「俺の咥えてただけでこんなに膨らんじゃったんだ?」
「……エロオヤジ」
「どっちが」
「だって……足りない」
「アイスが?」
「……佐藤くんが」
――だから意地悪、するな。
ずるいと思う。
さっきまで目をギラギラさせて俺を仕留めようとしていたくせに、急にそんな物欲しそうな目で見上げられたら、あげないなんて言えない。
「あっ……あ……ん……」
望んだ通りの刺激を甘受しながら、理人さんが艶高い声で悶える。
俺の白濁をまぶした二本の指が、泡立った入り口にグチュ……と飲み込まれた。
「んっ……ん、あ……!」
理人さんは自分のことを淡白だと言う。
俺はたまに「淡白の意味わかって言ってるのか!」と横っ面をはっ倒してやりたくなる。
本当に淡白な人間は、「もっと強く、してぇ……っ」なんて煽ったりしないし、「あ、そこ……やめないで……!」なんて強請ったりしないし、「きもちいい……っ」なんて感じながら微笑んだりしない。
「佐藤くん、もうっ……」
「欲しい?」
「うん……ほしい」
本当は、もっと〝意地悪〟していろんなことを言わせてみたい。
理人さんが今まで一度も口にしたことのないような卑猥な言葉で俺を欲しがってほしい。
ちゃんと言えるまで絶対に折れてなんかやらないし、なんなら泣いて縋ってくれてもいいと思う――のに。
「さとうくん、はやく……っ」
「……」
「ちょぉだい……?」
嗚呼。
人間はどうしてこうも弱い生き物なんだろう!
「あ、あ、あ、あ……!」
まだ十分に解れていない蕾が、ギチギチと音を立てながら俺の形に拡がっていく。
逃げようとする理人さんの腰を引き寄せ、
「あ!」
一気に挿れた。
「大丈夫?」
「もっとゆっくり、きてほしかっ……た……っ」
いつも通りの涙目に戻った理人さんに安心しつつ、それでも俺は苦笑を禁じ得ない
「散々煽ってきたのは理人さんでしょ?」
「だって、気持ちよかったから……」
「ほら、また」
理人さんのひと言で、理人さんの中を埋める俺の質量が少しだけ大きくなった。
なにか言いたげな理人さんの視線を無視して、俺は律動を開始した。
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