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閑話:午後10時の約束 (4)

ティッシュで指の滑りを拭い、さらに理人さんの尻の割れ目を拭きあげる。 「気持ち悪いところないですか?」 「……ん」 きつく合わせていた瞼を押し上げ、理人さんが浅く頷いた。 「中に出すなって言ったのに」 「しょうがないでしょ。ゴムがなかったんだから」 「だったら外に出せよ」 「ごめんなさい。気持ち良すぎて、間に合いませんでした」 理人さんの唇が、勾配の急なへの字を描いた。 続ける言葉を探すように行ったり来たりしていた視線が、やがて諦めたように斜め下に落ちる。 こみ上げる愛おしさを隠しきれずに、俺はその身体を腕の中に閉じ込めた。 「……明日、買ってくる」 「ゴム?」 「ん」 「じゃあ一緒に行きましょう」 「……絶対やだ」 「プッ」 しっとりと汗ばんだ背中を撫でると、理人さんは安心したように俺の胸にピタリと頬を寄せた。 理人さんは、〝後処理〟が大嫌いだ。 俺がやるのはもちろん、自分でやるのも。 あまりに嫌がるから、一度何もせずにそのままにしておいたことがあった。 そうしたら次の日、理人さんは腹を下した。 後処理をサボったこととの因果関係は不明だけど、それ以来理人さんは後処理を怠らない。 ただ自分でやるのはどうしても抵抗があるようで、最終的にはいつも俺が手伝ってあげている。 もちろん、そうなるとそのまま第二ラウンド……なんてことも多々あるわけで―― 「なに、考えてたんだよ」 「へ?」 「さっき。考え事してただろ」 「ああ……なんでだろうと思って」 「なにが?」 理人さんが、腕の中から不思議そうに俺を見上げてくる。 「俺が初めてここにあげてもらった日、理人さん、俺のこと押し倒したでしょ?」 「うん」 「そのまま俺を咥えましたよね?」 「……うん」 「でもその先はしなかったでしょ?なんでだったのかな、って」

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