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閑話:午後10時の約束 (5)
理人さんの頬に、サッと紅が刺した。
「そ、んなの……できなかったからに決まってるだろ」
「え」
「突然好きだとか言われてものすごく焦って、ああこいつそう言えば俺の真似してクリームソーダ注文してたなとか、物欲しそうな目で見てたのはそういうことだったのかと思ったら、なんかすごく佐藤くんがかわいく見えて……」
「俺が見てたの気づいてたんですか?」
「そりゃ、あんだけ見つめられたらな……」
男なのになんでとは思ったけど、と理人さんが笑う。
「佐藤くんがすごく気持ち良さそうにイったの見て俺もムラムラはしたけど、でも俺は挿れる方やったことないし、だからって会ったばっかりの佐藤くんにまさか『挿れて』なんて言えないし、そもそもそういう関係じゃない相手とセッ……とか、どうなんだよって思って……」
たぶん、最後のが一番の理由なんだろうな。
「理人さんのそういうとこ、大好きです」
「……うるさい」
包み込む腕の力を込めると、理人さんも俺の背中に手を回してキュッと抱きしめてきた。
「あの時、しなくてよかった」
「えっ?」
「だって……佐藤くんと一夜限りの関係で終わるなんてもったいなすぎる、だろ」
……だから、さあ。
そんなことを、そんな風に、そんな顔で、言われたら、さあ。
「ん!」
キス、したくなるし。
「ん、んんっ!?」
弱いの知ってて、乳首コリコリしたくなるし。
「んんっ、んう!」
ふにゃふにゃのそれを、またカチカチにしてやりたくなるし。
「 んっ、ちょ、おい!」
「だめですか……?」
わざとらしく、シュンとしてみたくなるし。
「……約束」
「え?」
「明日の朝も、ちゃんと隣にいるって約束してくれるなら……いい」
ああ、もう。
この人は。
「いますよ、約束します」
「……ん」
「明日も、明後日も」
「……うん、っあ!」
「その先も、ずっと」
「あ、あ、あ……っん!」
いつだって、あなたの隣に。
fin
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