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閑話:午後2時の再会 (1)

午前7時。 ピピピピピッ……。 まずは、ひとつ目。 ピピピッ、ピピピッ、ピピピッ……。 つぎに、ふたつ目。 ビーッ、ビーッ、ビーッ! 最後に、みっつ目。 「ん……んんううぅぅ」 そこまできて初めて、理人さんが動いた。 苦しげに眉を寄せながら頬を擦り寄せてくる理人さんの背中を撫でつつ、不快感を与えるよう計算された音をかき鳴らしている目覚まし時計を順番に止めていく。 カチリ、とみっつ目のボタンを押すと、辺りが一気に静けさを取り戻した。 安心したように息を吐き夢の世界に戻ろうとする理人さんを、優しく揺り起こす。 気怠げに動いた瞼がゆっくりと持ち上がり、理人さんの世界に俺が現れた。 「おはようございます、理人さん」 「……お、はよ」 「7時ですよ」 「……ん」 「ランニングの時間……」 「やだ」 「でも週末は一緒にって……」 「ねむい」 ゆるゆると首を振りながら、また目を閉じてしまう。 本当に、何度見ても朝の理人さんはたまらなくかわいい。 「えぇー、俺、理人さんと一緒に走るの楽しみにしてたのにー」 「……」 「せっかく色違いで買ったウェアもまだ3回しか着てないしー」 「……」 「今日は公園の桜を見ながら一緒にお花見気分味わえると思ったのにー」 「……」 「空もすっごく綺麗だし、絶対気持ちいいと思うんだけどなー」 「……」 わざとらしくでかい独り言を並べてみても、理人さんは微動だにしない。 絶対に聞こえているはずなのに、どうやら今朝は寝たフリを決め込むつもりらしい。 ようし。 こうなったら、最後の手段だ。 「あーあ、寝ちゃったんならしょうがない。今日は俺ひとりで……」 起こしかけた上半身が、強く締め付けられた。 「……それはだめ」 うん。 朝の理人さんは、とてつもなくかわいい。

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