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閑話:午後2時の再会 (2)

午前9時。 じゃがいもの焼ける甘い香りがキッチンに広がっていく。 小判型のハッシュドポテトをフライ返しでひっくり返すと、油がパチパチと跳ねた。 淡い黄金色に輝く表面を見つめ、心の中でこっそり自画自賛する。 初めてにしては上出来だ。 自分の口角が上がるのを感じながら、四角い皿を二枚準備する。 そしてカウンター越しにリビングを見やり、ため息を吐いた。 「理人さん、髪乾かさないと風邪引きますよ」 3人がけのソファに倒れ伏していた理人さんの背中が、僅かに動いた。 「もう乾いた……」 「うそ。ベタベタのままでしょ」 理人さんは長い腕を、もぞ……もぞ……と動かし、頭に乗っけたままのタオルを掴む。 見ていると焦ったくなるような緩慢さで、ゆるゆると拭いた。 でもすぐにまたダラリと腕を垂らしてしまう。 「理人さん、大丈夫ですか?」 「……」 「疲れた?」 「二度寝したい……」 「朝ごはんは?」 「……食べる」 そう言いながら、全然起き上がる気配はない。 しょうがないな。 漏れそうになる笑いを口の中で消化し、ちょうど焼きあがったハッシュドポテトをひとつずつ皿に盛りテーブルに運ぶ。 「ハッシュドポテト、できましたよ」 コト、と控えめな音を立ててふたつの皿を並べると、理人さんが首を動かしてこっちを見た。 ぼんやりと彷徨っていた視線が、ハッシュドポテトとその隣に並んだ色とりどりのミニトマトを捉える。 「美味しそう……」 「プッ、それはよかった。ほら、起きて」 のっそりと起き上がった理人さんの髪は、やっぱり湿っていた。 「タオル貸してください」 「……ん」 「だから一時間は無理だって言ったのに」 ガシガシと髪をかき混ぜながら理人さんを覗き込むと、唇が尖っていた。

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