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閑話:午後2時の再会 (5)

午後2時。 理人さんの言葉通りきっかり40分間電車に揺られてたどり着いた先は、まるでおもちゃ箱のような美容院だった。 赤で縁取られた扉を押し開けると、上にぶら下がっていた鈴がチロリンと可愛らしい音色を奏でる。 すると、店内にいた人たちの視線が一斉に俺たちに集まった。 そのうちひとつの影が小走りに近づいてきた……と思ったら、理人さんに抱きついた。 「まーくん!」 まーくん……? 「しんちゃん」 しんちゃん……? 「ひっさしぶりじゃん!元気だった?」 「うん。しんちゃんは?」 「元気!インフルはしっかりやったけど」 「予防接種しなかったんだろ」 「したよ!って、え?まーくんはしたの?」 「した」 「うっそだあ!」 「ほんと」 「ねえ、天変地異起こる!?」 「失礼だな……」 唐突に咲き乱れた話の内容についていけずに、ただ見つめてしまう。 どうやらこの『しんちゃん』が理人さんの高校の同級生らしい。 理人さんより若干小柄で、綺麗なアッシュ色の髪がとてもよく似合っている。 ころころ変わる表情はとても豊かで、年齢よりも幼く見えた。 じっと観察していると、ふと視線が交わりにこりと微笑まれる。 「まーくん、紹介して?」 「あ、あー……知り合い……友人……友達……の、佐藤く……佐藤英瑠、くん」 理人さんが、言葉を濁しまくりながら俺を紹介した。 思わず苦笑を漏らすと、『しんちゃん』が俺を見て目を細める。 「こら、理人!カレシなんでしょ?なんで隠そうとするの!」 「あー……」 「もう!」 そうか。 この人も、理人さんのことをよく知っているんだ。 「で?今日はどうするの。いつもみたいに揃える?」 「……ん」 「じゃあ、まーくんはあっちね。久田(ひさだ)くーん!」 「はーい!あ、神崎さん!」 奥から出てきたのは、笑顔が爽やかな青年だった。 「まーくんは久田くん担当ね」 「え、でも」 「いいからいいから!久田くん、よろしくー」 「はーい!」 理人さんはチラリと俺を見てから、店の奥に連れられていった。 「さて。英瑠くん?」 「あ、はい」 「いい名前だね。僕は西園寺(さいおんじ)(しん)って言います。まーくんの高校時代のルームメイト。よろしくね?」 「よろしくお願いしま……ルームメイト?」 「あれ、聞いてない?僕たちの高校、全寮制だったんだよ」 と、いうことは。 「全寮制の男子校……?」 「そ!」 なんというか、それは……危険だ。

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