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閑話:午後2時の再会 (6)

「英瑠くん、髪キレーだね。なにかしてる?」 「特になにも……」 「そうなんだ。じゃあちょっとうねってるのも天然?」 「はい」 パラパラと髪が舞い落ちていくのを見送りながら、鏡越しに『しんちゃん』を見た。 きっと理人さんとのあれこれを聞かれるんだろうな、なんて思っていたけれど、西園寺さんは当たり障りのない話題に徹しながら軽快にハサミを入れていった。 金属が擦れる規則正しい音が心地いい。 「んー、こんなもんかな?あんまり短くすると襟足浮いちゃうかも」 「あ、ちょうどいいです。ありがとうございます」 「……」 「西園寺さん……?」 鏡越しにじっと見つめられ振り返ると、西園寺さんはアッシュグレーの髪を搔き上げて目を細めた。 「ごめんね。嬉しくて」 「嬉しい?」 「理人とは高校の入学式で出会って以来の付き合いになるけど、友達にしろ彼氏にしろ、誰かを連れてきてくれたのは今日が初めてなんだよ」 「えっ、木瀬さんは?」 西園寺さんの丸い目が、さらに丸くなる。 しまった、つい……! 勢いで零れた言葉を後悔していると、西園寺さんは俺以上に顔をしかめた。 「木瀬先輩?まさか!」 「え……」 「もし来たとしても僕が絶対に店に入らせない」 まるで親の仇を睨むように鏡の中の自分にガンを飛ばしながら、西園寺さんがケッと言葉を投げ捨てる。 木瀬さんとなにかあったんだろうか……あったんだろうな。 俺が触れてはいけないなにかが。 「……高校時代の理人さんってどんな感じだったんですか?」 恐る恐る話題を変えると、西園寺さんの顔に笑顔が戻った。 「ちっこかった」 「そうなんですか?」 「今の半分くらい……とまではいかないけど、一年の時は僕の肩くらいまでしかなかったよ。卒業する頃には余裕で抜かされてたけど」 確か、木瀬さんもそんなことを言っていた。 小さい理人さんか……ちょっと見てみたい。 「でも、それ以外はあのまんま」 西園寺さんは、愛おしそうに目を細めた。 その表情だけで、理人さんに対する思いが伝わってくる。 もちろん、俺のそれとはだいぶ種類は違うんだろうけど。 「あ、そうだ」 ちょっと待ってて。 そう言い残し、西園寺さんはさっさと奥に消えてしまう。 でもすぐに鼻歌交じりに戻ってきて、物騒なものを両手に構えた。 「英瑠くん、ちょっと遊んでいい?」

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