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閑話:午後2時の再会 (7)

武器のように構えた二種類のヘアアイロンを駆使して、西園寺さんが俺の髪を巻いていく。 くるっくるになった髪がぽよんぽよんと耳元で跳ね、まるで日曜の夜に放送されている国民的アニメの主人公のようだ。 「英瑠くんパーマとか似合いそうだけど、かけたことある?」 「ないです。ヘアスタイルにあんまり興味なくて」 「だろうね」 「えっ」 「理人もそうだけど、イケメンって自分をよく見せることに執着がないから、そういう人が多いと思うんだ」 「はあ……」 ん? 今、さりげなくイケメンだって褒められた? 「こうやってちょっと巻いて流すだけでもだいぶ印象が変わるから、やってみると面白いと思うよ」 視線で促され、鏡の中の自分を見る。 確かに髪の毛がくるくるになった自分を見るのは初めてだから、面白いかどうかと聞かれたら きっと面白いと答えると思う。 でもまさか、これが完成形……じゃあない、よな? このままだと『ジャンケーンポン!うふふふふ!』とか言わされかねない。 なんとなく不安になって西園寺さんを見やると、ヘアアイロンをブラシに持ち替えスタンバイしていた。 ここからが本番だよ、と笑顔で言われホッとする。 いったいどんな髪型になるのか想像がつかない。 俺はまな板の上の鯉になったような気分で、すべてを任せることにする。 「真ん中からちょっとずらした位置で分けて、半分を後ろに流して……あ、前髪垂らすのもいいな」 いろいろやっては、戻し。 戻しては、またいろいろやり。 文字通り〝遊び〟ながら、西園寺さんは俺のヘアスタイルを作り上げていった。 「うん、いい感じ!」 西園寺さんが満足げに俺の肩を叩いた時には、鏡の中の俺はすっかり俺じゃなくなっていた。 波打った髪が半分は後ろに、半分は斜め下に流れている。 目にかからない角度で垂れた前髪が独特な雰囲気を作り出していて、なんだか……。 「どう?」 「陰のある男、って感じです、ね」 自分で言うのはどうかと思ったけれど、ほかにいい表現が浮かばずそのままの感想を言葉にすると、西園寺さんは飛び上がる勢いで喜んだ。 「でしょ?まーくんも惚れ直すと思うよ!」 少年のように目を輝かせる西園寺さんにつられ、俺もつい頬の筋肉が緩む――と、背後にふと人の気配が混じり、鏡の世界の住人が増えた。 「心、佐藤くん終わっ、た……?」

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