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閑話:午後2時の再会 (9)

「んもう、まーくん!」 「ちょっ……」 「こーんなに大きくなっても中身は全然変わらないんだから!」 「……」 西園寺さんにぎゅうぎゅうわしゃわしゃされながら、理人さんがへの字口を復活させる。 理人さんの方が背が高いのに、西園寺さんはわざわざ腕を伸ばして、整えられたばかりの髪を乱しているし、理人さんは不満を露わにしながらも西園寺さんを止めようとはしない。 なんだか兄と弟……いや、飼い主と猫のようだ。 好きすぎて構いたくてしょうがない飼い主と、気まぐれにそうさせてやっている猫。 そんな表現があまりにぴったり当てはまって、溢れ出る笑いを堪えきれない。 ふたりの間に漂う厚い信頼と尊敬の気持ちも、俺の胸を熱くさせた。 理人さんは、ご両親が亡くなってひとりぼっちになったと言っていた。 でも本当は、こうして見守ってくれている人たちがいる。 それぞれ思いの種類や形は違うけど、ひとつだけ共通していること。 みんな、理人さんのことが大好きだ。 「西園寺さん」 「ん?」 「これ、せっかくやってもらったんですけど……崩してもいいですか?」 「えっ……」 声を上げたのは、理人さんの方だった。 西園寺さんはようやく理人さんを解放して俺に向き直ると、最初から分かっていたかのように頷いて俺を見た。 「もちろん!英瑠くんの好きにして?」 「ありがとうございます」 後ろに流れていた髪を前に戻そうとしたところで、手首を掴まれた。 「理人さん?」 「そのままでいい」 「でも……」 「いい、そのままで。せっかく……心が、やったやつだし」 理人さんの口からボソボソ紡がれた言葉は、また西園寺さんを鬱陶しい飼い主に変えてしまった。

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