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閑話:午後2時の再会 (10)

今度は気が乗らなかったらしい理人さんは、西園寺さんの撫で撫で攻撃から身をよじって逃げ出し、ポケットから財布を取り出した。 「お金払ってくる」 「いいよ、そんなの」 「だめだ。払う」 「あ、俺の分……」 「俺が払う」 理人さんは、笑顔を携えた久田さんが待つカウンターへとさっさと歩いて行ってしまった。 相変わらず背筋は気持ちいいくらい真っ直ぐに伸びているし、足取りもスタスタと軽快だ。 でも、両方の耳が真っ赤だった。 「ほーんと、かっこかわいいんだから」 西園寺さんの言葉に全力で同意しながら、久田さんと言葉を交わしている理人さんを見やる。 楽しそうだ。 仕事以外で理人さんが人と触れ合う様子を見るのは新鮮だ。 会社での緊張した面持ちとも、俺の前でのリラックスした表情とも違う理人さんがそこにいる。 ふと視線を感じて振り返ると、西園寺さんがおかしそうに俺を見ていた。 「あ……今日は突然すみませんでした」 「なんで謝るの。こっちこそなんのお構いもできなくてごめんね?」 「いえ、そんな。偶然でも西園寺さんにお会いできてよかったです」 「偶然?」 西園寺さんの声が僅かに裏返った。 なにかおかしなことを言ってしまっただろうか。 なんとなく不安になっていると、西園寺さんが理人さんの背中を見た。 そしてまた俺に向き直り、やんわりと目を細める。 「僕、普段からいろんな店舗をいったりきたりしてるんだ。一応オーナーだからさ」 「あ、そうなんですか」 「特別な事情がない限り店を回る順番はなんとなく決まってるから、ここには偶数月の第2土曜に来ることがほとんどかな」 「えっ……」 「カット枠が空いてたのは本当にたまたまだったけど」 偶数月の第2土曜日? 今日じゃないか。 じゃあ理人さんは、今日ここに西園寺さんがいるって知っていて予約を入れたということ? 「理人はさ、英瑠くんを僕に紹介したかったんじゃないかな?」 「俺を?」 「大切な人ができました、って」

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