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閑話:午後2時の再会 (12)

外に出ると、爽やかな春の風が頬を撫でた。 気持ちいい。 理人さんと付き合い始めてから、三つ目の季節がやってきた。 もう三つ目という気もするし、まだ三つ目という気もする。 大人になると時の流れが早くなると言うけれど、理人さんと出会ってからの毎日は隅々までが忘れたくない瞬間で埋め尽くされていて、あっという間のような、そうでないような。 今日のこの数時間も、かけがえのないものになった。 十年後、二十年後……三十年後。 年を取った俺の隣に、同じように年を取った理人さんがいてくれたら。 恥ずかしい思い出話として披露して、理人さんの耳をまた真っ赤にしてやりたいと思う。 「理人さん」 「ん?」 「西園寺さん、すごくいい人ですね」 「……うん」 理人さんは、穏やかに目を細めた。 「俺、中高一貫校に高校から外部入学したから、馴染むのにけっこう苦労したんだ。でもしんちゃ……心はそういうの一切気にせず友達になってくれた。だからほんとに、いい奴なんだ」 「はい、わかります」 俺の言葉に、理人さんは満足そうに口の端をあげた。 西園寺さんと理人さんを結び付けているのは、嫉妬や妬みなんて跳ね除けてしまうくらい純粋な思いなんだと思う。 そんな強い絆で結ばれた人に、俺を会わせてくれた。 恋人として。 そのことが、すごく嬉しい。 「それにしても、理人さん」 「ん?」 「中高一貫の全寮制男子校ですか」 「そこかよ……」 変態、と鋭い視線で訴えながら、でも理人さんはすぐに目をそらしてしまう。 「理人さん……?」 「その、髪型」 「これ?」 「かっこいいけど、心臓に悪い」 気まぐれな春の風が、桜色に染まった理人さんの横顔を露わにした。 心の奥から愛しさが溢れ出す。 まだ三つ目。 もう三つ目。 どっちでもいい。 一緒に過ごした季節の数なんて関係ない。 俺は、理人さんが好きだ。 これからもずっと、数えきれないくらいの季節を一緒に過ごしていきたい。 そう、思うだけ。 「理人さん」 「ん?」 「今夜眠れれなかったらごめんなさい」 「えっ……」 「嫌ですか?」 「……」 「理人さん?」 「嫌なわけない、だろ。むしろ――」 ――早く、帰りたい。 「理人さん……」 これからずっと一緒にいられるかどうかなんて、誰にもわからない。 いつかは壊れるかもしれない。 離れていくのかもしれない。 そんな不安がないわけじゃない。 それでも。 ずっと一緒にいよう。 そんな根拠のない口約束を交わすつもりもない。 俺にできるのは、今ここにある感情を大切に育んでいくことだけ。 「好きです」 「俺も……好き」 俺たちは、春の空気に包まれながら淡い口づけを交わした。 fin

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