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閑話:午後8時のロールプレイ (4)
焼きそばの材料が入った袋をひとつずつ持ち、三階分の階段を上る。
二段先を行く佐藤くんの背中は大きく、広い。
思わず抱きしめたくなるのをぐっと我慢する。
玄関に入ると、佐藤くんが俺の分もスーパーの袋を引き受けてくれた。
そのままキッチンに向かい、冷蔵庫を開ける。
手伝おうとすると、視線で廊下の先を示された。
佐藤くんの部屋に足を踏み入れると、不思議な暖かさが俺を包む。
佐藤くんのものが溢れた場所。
佐藤くんのにおいが漂う場所。
俺の大好きな場所。
「佐藤くん」
「はい?」
「着替えたいから、なんか服貸して」
「嫌です」
「え?」
振り返った先にいたのは、佐藤くんだった。
当たり前だ。
今ここには俺たちしかいないんだから。
でも、なんでだろう。
さっきまで俺を包んでいた安心感が、急に薄れていく。
にこにこといつになく品のいい笑みを浮かべた佐藤くんの手には、空色のネクタイが握られていた。
俺のだ。
やっぱりあの夜忘れていったんだな。
どうりで探してもなかったわけだ。
そう思った時にはもう俺のほっぺはベッドに押し付けられていて、痛いと感じた時には両腕をギリギリと締め上げられていた。
「佐藤、くん……?」
「神崎さん」
「へ」
「あんた、自分がなにしたのかわかってる?」
そして、冒頭に――戻る。
とりあえず情報を拾い集めてまとめると、この〝プレイ〟の設定はこうだ。
俺は、佐藤くん監督のもと下請けとして働くいち作業員。
その俺が致命的なミスを犯し、佐藤くんの会社に大きな損害を出した……らしい。
念のため言っておくと、俺が今日犯したミスはたったひとつ。
閉め忘れた蛍光ペンのふた。
ただそれだけだ。
「んっんんっ……!」
とっくに捨てたと思っていた〝大人のオモチャ〟が俺の中を出たり入ったりする。
その度にぐちゅぐちゅと水音が漏れ、俺の羞恥心を煽ってくる。
首を捻って振り返ると、佐藤くんと目が合った。
途端に、抜き差しの勢いが増す。
「い、いや、いやだ、もっ……ぬ、抜いて……っ」
「嫌?」
佐藤くんが、ニヤリと笑った。
「ここはそうは言ってませんよ。ほら」
「ふぁっ……あっ、あ、あっ!」
ぐりぐりと抉るように奥まで挿入され、膝がガクガクした。
股の間でこれでもかと反り上がりその存在を主張している俺自身が、淫らな雫を止めどなく溢れさせる。
「んっ……あっ、んふぅ……っ」
「オモチャだけでイッちゃいそう?」
「ちがっ……あ、いやっ、ああん……っ」
「まさか神崎さんが、こんなにエロいとは思わなかった」
佐藤くんが、嘲るように鼻から息を吐いた。
いい加減へんな演技やめろよ。
そう言ってやりたいのに、俺の口から漏れたのは乱れた吐息と、唾液の筋だけだった。
「あっ……ああ、あ!」
視界がだんだんぼやけてくる。
なにが本当で、なにが嘘なのかわからなくなってくる。
本当に佐藤くんにお仕置きされてる気がしてくる。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
謝るから。
だからもう、許して。
「ふあぁっ!」
大小の球が競い合うように次々とそこを擦り上げる。
ゴリゴリ。
コリコリ。
内壁の敏感な部分をピンポイントで撫でられ、顎が震えた。
いやだ。
やめて。
だめ。
やめないで。
もっと。
はやく。
だめだ。
わけがわからない――
「ご、ごめんなさいっ」
「え?」
「謝るから……っ」
「神崎さん?」
「もう、イかせて……!」
そう懇願した瞬間、佐藤くんは全身の動きを止めた。
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