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6ー3:午後6時の団欒 (6)
理人さんは、瑠加の後ろ姿が吸い込まれていった裏口を淋しげに見つめた。
そして、手に持っていたパーカーをもそもそと羽織る。
「……でかい」
「ごめんなさい、俺が昔着てたやつなんで」
「そこを謝られるとなんかムカつくな……」
じっとりとした視線で俺を見上げてから、理人さんはパーカーの裾を引っ張った。
手の甲まですっぽりグレーに覆われていて、図らずとも『彼シャツ』状態になっている。
かわいい。
「早まったな……」
「え?」
「瑠加ちゃ……瑠加、俺のこと気にしないって言ってくれたけど……」
「理人さん……?」
「これ、着てくれなかった。やっぱり、気持ち悪いよな……」
理人さんの呟きに、自嘲が混じる。
横顔が、とても儚い。
「ああ、違う、そうじゃなくて。理人さん、違いますよ」
「……なにが?」
「瑠加は、惚れっぽいんです」
「惚れっぽい?」
「ちょっと優しくされるとすぐ好きになタイプで、だからいっつも続かないんですけど。たぶんさっきは、理人さんにもトキめいちゃって、好きにならないように自制したんだと思います」
理人さんのアーモンドアイが、夕暮れ時の空をめいっぱい映し出す。
その夕陽に負けないくらいに、頬が赤く染まった。
「え、なんで?俺、なにかした?」
「してましたよ。いろいろ」
「ええっ!なにを!?」
「そこ言わせるんですか。俺が理人さんに惚れた理由をつらつら挙げ続けることになるけどいい?」
「……よくない」
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