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6ー3:午後6時の団欒 (7)

川の水が流れる音。 池の水が佇む音。 遠くの方に聞こえる自動車のエンジン音。 空を横切る帰巣途中の鳥の鳴き声。 少しずつ増え始めた虫の声。 俺たちの間を、様々な種類の音が通り抜けていく。 理人さんは細長い指を複雑に絡ませながら、優雅に泳ぐ鯉の動きを目で追っていた。 「理人さん」 「ん?」 「ちょっと散歩しませんか?」 「うん!あ、でも……」 「大丈夫。瑠未は遊び疲れて昼寝してるし、母さんたちは夕飯作ってます」 「手伝ったりは……」 「人手は十分足りてると思いますよ。それに、理人さんがまた手の皮剥いちゃったら困るし?」 途端に、理人さんの顔が真っ赤になった。 「それ、みんなの前で言うなよ……?」 「プッ、分かってます」 「ほんとかよ……」 訝しげに俺を見上げ、目を細める。 でもすぐに池の水が跳ねる音がして、理人さんは表情を和らげた。 「鯉って白と赤のイメージだったけど、黄色も綺麗だな」 「その黄色いやつは、理人さんより年上ですよ」 「そうなのか?」 「葉瑠兄が生まれた時に祖父ちゃんが仕入れてやつなんで、少なくとも38年は生きてます」 「へえ!鯉って寿命長いんだな」 「品種と住環境にもよると思いますけど、長ければ100年単位だって」 「100年!?」 大きな声が、空気にこだました。 ハッとした理人さんが、ごめん、と控えめに謝る。 俺は小さく笑ってから、挨拶でもするかのように俺たちの足元を行ったり来たりする黄色い魚影を見下ろした。 「何年か前に豪雨で裏の川が増水して池ごと流されちゃったんですけど、こいつだけは残ったんです」 「ふぅん。葉瑠先生と一緒にいたかったんだな」 声が、溶けてしまいそうなくらい優しい。 「ん?あそこ、亀みたいなのがいる」 「みたいっていうか、亀ですよ。瑠衣が生まれた時に仲間入りしたやつ」 「えっ」 「ちなみに瑠加のは、あの柿の木です」 理人さんが、一生懸命頭を揺らして俺の指先を追いかける。 そして立派に育った柿の木を下から上にゆっくりと見上げ、嘆息した。 「なんか……すごいな」 「え?」 「この庭には、愛情しか詰まってない」 「理人さん……」 「佐藤くんが生まれた時はなんだったんだ?」 「ああ、こっち」 池の淵を慎重に歩き、緑色の葉が生い茂った一本の木を示した。 「この木です」 「これ?は、なんの木?」 「な――」 「南天だ」 低い声が答えた。

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