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閑話:午後3時の勝負 (1)
「はあ」
「はあ」
「はあ」
「はあ」
「はあ……あっ!」
ボスンと倒れこんだ身体が、圧し掛かってきた重みでさらに沈み込む。
離れるどころかさらに密着度を増した唇から、ぬるりと舌が伸びてきた。
ほんの少しだけ隙間を作って誘い入れ、飢えを満たす獣のように口内を蹂躙する舌先を必死に追いかける。
角度が変わるたびに焦れに焦らされた熱が布越しに擦れ合い、呼吸を荒くさせた。
「理人さん、っはぁ……これってどっちの、勝ちですか……?」
「うるさい、俺の負けでいいから早く脱がせろ……っ」
玄関の扉が閉まりきらないうちに唇に噛みついた。
どちらが先かは分からない。
もつれ合いながらベッドルームに向かい、荷物を放り投げた。
意識の端っこがほんの一瞬だけ山菜や野菜の身を案じ、でもすぐに汗ばんだ男の匂いに覆いつくされ、理性はふっ飛んだ。
「佐藤くん、はやくっ……」
「黙って」
身に着けていた自らの衣服は一気に剥ぎ取ったくせに、俺のシャツのボタンを外す指はひとつひとつやたら丁寧だ。
小刻みに震える手首を掴んで身体ごと跳ね飛ばし、勢いよく起き上がった。
厚い胸板に体重を預けて腰を浮かし、下着ごとズボンを抜き取り下半身を晒す。
瞬きを忘れたように見上げてくるふたつの瞳を見返し、きっちりと閉まったままのズボンの合わせ目に手を伸ばした。
気持ちばかりが逸ってうまくいかない。
ようやく固いチャックを下ろすと、これでもかと高ぶった熱がプルンと飛び出してくる。
根元を握りしめると、佐藤くんの咽喉仏が上下した。
「ちょっと理人さん!なにをっ……」
「もう挿れたい」
「は!?」
「というより、挿れる」
佐藤くんの先端を当てがい下ろそうとした腰が、両側から掴まれた。
「だめ、だめです!」
「なんでっ」
「全然解してないのに、痛いし切れちゃうでしょ!」
「そんなの……」
「大事にするって決めたんです!」
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