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閑話:午前11時の逢引 (2)
「瑠加ちゃん!?」
『……』
「あ、ごめん……瑠加」
『よろしい。もしかしてまだ寝てた?』
「あー、いや……うん、半分」
スマホの向こう側の世界で、僅かに空気が笑った。
くそ……恥ずかしいな。
まさか瑠加ちゃんからだとは思わなかったから、完全に油断して……あれ?
「なんで俺の電話番号……」
『この間LIME交換したじゃん』
「うん、した……けど?」
『もしかして使ったことない?LIME電話』
LIME電話?
あー、なるほど。
これが噂のLIME電話……って、なんだ?
『理人?起きてる?』
「お、起きてるよ!」
『今日、暇でしょ?』
「えっ……」
『英瑠がバイトじゃん』
「あー……うん」
『だからさ、ランチ付き合って』
「……うん?」
あとで待ち合わせ場所と時間送るから、と告げ、電話は一方的に切れた。
なんというか、いつも元気だなあと思う。
今まで俺の周りにはあんまりいなかったタイプの女性だ。
話す言葉が真っ直ぐで、すごく気持ちいい。
あまりにあっけらかんと『男同士だからなに?』と言われた時は、びっくりしたけど嬉しかった。
きっと友達も多いだろうし、いつも周りを明るくする存在なんだと思う。
そういう意味では、やっぱり佐藤くんと似てるのかも。
ピヨピヨピヨ。
ひよこが鳴いて、待ち合わせ場所と時間が送られてきた。
瑠加ちゃんといい、佐藤くんといい、文字を打つのが異様に早い。
いや、俺が遅いだけか……ん?
「ドレスコードあるからよろしく……って」
いったいどんな高級ランチに連れて行かれるんだ……?
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