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閑話:午前11時の逢引 (7)
あ、これ、俺が高校の時に流行った曲だ。
佐藤くんが弾くと、こんなキラキラした感じになっちゃうんだな。
すごい。
やっぱりかっこい――
「理人」
「えっ?」
「見すぎ」
「ご、ごめん!」
英瑠にも絶対バレてるよ。
揶揄うように言われ、頬が熱を持つのが分かった。
くそ、なにやってんだ、俺。
こんなの、瑠加ちゃんにも失礼じゃないか。
絆されるな、しっかりしろ!
もう一度、ごめん、と謝り姿勢を正して向き直ると、瑠加ちゃんはさもおかしそうに笑った。
「全然いいけど。理人はさ、結婚式出たことある?」
「うん、何度か。ここ数年はけっこうラッシュだった」
「あたしも!おめでたいけど、お金は飛んでくよねー」
そういえば、俺が瑠加ちゃんを初めて見たのも、結婚式の帰りだった。
男も女も、30という年齢はひとつの節目なのかもしれない。
「男はスーツ着まわしてなにも言われないでしょ?でも女子は、一度着たドレスは着づらいし、だからって毎回買ってたらお金がなくなるし〜」
「ふぅん、大変なんだな」
「大変だよ!でも……」
「結婚式っていいよな」
「結婚式っていいよね」
あ、すごい。
完全にハモった。
「理人もそう思う?」
「うん。正直行くまでは面倒くさいけど、行ったらもれなく感動する」
「だよね!あたしも!」
特に、新婦から両親への手紙。
あれはまずい。
毎回必ず、泣かされる。
「理人」
「ん?」
「英瑠とはいつ結婚するの?」
「んぐっ!」
う……勢いで、ミニトマト丸飲みしちまった。
「まさかしないの?両親に挨拶までしたのに」
「あ、あれは……いやだって、俺たちは男同士だから」
「前にも言ったけどさあ、あたしからするとそれがなに?って感じ。日本じゃ同性同士の結婚はまだできないけど、海外行って挙式する人たちもいるじゃん?」
「そう、かもしれないけど」
「家族しかできないことって、けっこう多いと思うよ。たとえば、病院の面会とかも断られるらしいし。お互いの死に目に会えないとか、寂しくない?」
「それは嫌だな。死ぬまでには結婚しとかないと」
瑠加ちゃんが、あんぐりと口を開けた。
「な、なに?」
なにか、変なことを言っただろうか。
不安になって、でも瑠加ちゃんの顔には、すぐに今にも蕩けそうな笑顔が浮かんだ。
「いいね、ほーんと」
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