353 / 492
7-2:午後6時半の来訪 (1)
久しぶりの晴天に恵まれた、月曜日。
朝のオフィス街を行き交う人たちの足取りも、心なしかいつもより軽い気がする。
天気予報には大雨警報に代わって熱中症の警告が踊り、まだ9時にもなっていないというのに太陽の光は強く、日向にいると鼻の頭がジリジリと焼かれる。
脇の下がじっとりと汗ばむのを感じながら、青信号で一気に動き始めた人の波に飲まれながら、横断歩道をトボトボと渡った。
「おはようございます……」
「佐藤くん、おはよ!……って、うわ、なんかゾンビ!?」
いつも通り制服に着替えてカウンターに入った俺を、宮下さんがぎょっと目を見開いて迎えてくれた。
斜め下にある丸い瞳に映る俺は……ああ、確かにゾンビっぽい。
「今朝はひとりなの?珍しいね。神崎さんは?」
「宮下さーん、心の傷をサラッと抉ってこないで……」
「え、なに!?なにかあったの!?」
「聞いてくれますか?俺の心の嘆きを」
「聞く聞く聞くよ!聞くから話してっ!」
「実は……」
「同棲を断られた!?」
あ、言葉にされると、けっこうくる。
しかも大音量だったから、ものすごくグサッとときた。
「えっ、なんで!?ご家族への紹介はうまくいったって言ってなかった?」
「もう最高に上手くいきましたよ。グループLIMEでいつもなにかしら盛り上がってるし、父と母は俺よりもむしろ理人さんを心配して連絡しまくってるし」
「じゃあ、なに?なんで同棲がだめなの!?」
「それが――」
ともだちにシェアしよう!