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7-3:午後8時のジュ・テーム (1)

7月15日は、海の日だ。 梅雨明けもまだな今、海水浴日和とは決していえないけれど、湿度と一緒に上がった気温に喘ぎ、海に出かけている人も多いんだろう。 でも俺たちは、海に行く代わりに、汗水垂らして荷解きに勤しんでいた。 窓際には、アルミフォイルのてるてる坊主が所狭しとせめぎ合っている。 相も変わらず降り続く雨に暇を持て余した先週末、二時間近くかけて作ったざっと20個のてるてる坊主たちは、電気を反射してそれそれはキラキラと銀色の光を放ってはいたけれど、残念ながら今日の天気は曇り。 それでも、数日前まではほぼ確定していた傘マークが雲に追いやられたのは、カサカサキュッキュと歯に響きそうな音と戦いながら生み出した彼らのおかげだと、俺は思っている。 「こっち半分、佐藤くんな」 そう言って分け与えられた寝室のクローゼットのスペースは、本格的な夏を迎えるための服であっという間に埋まっていった。 理人さんと一緒に過ごす、はじめての夏。 いろんなことをしてみたい。 もちろん、水着姿の理人さんを堪能するのは必須事項だ。 お揃いの浴衣を着て夏祭りに行きたいと言ったら、理人さんはどんな顔をするだろう。 人が集まる場所が極端に苦手な理人さん。 最初は嫌だと言って、でもきっと最後には笑顔で頷いてくれるはず。 そんな風に思ってしまうのは、やっぱり俺が今日という日に浮かれているからだろうか。

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