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7-3:午後8時のジュ・テーム (11)
「あっ……あ、ぁん……っ」
「気持ちよくなってきた?」
「んっ……い、いいっ……」
理人さんの声が少しずつ色を変え、甘い吐息に埋もれていく。
俺は理人さんの腰の下に枕を差し込み、より露わになったそこにローションの雫をトロリと垂らした。
途端に、ぐちゅぐちゅと濁った水音が際立つようになる。
「ひぁっ……あ、あ、そ、そこ……っ」
「いいんでしょ?」
「あっ、だ、だめだっ……!」
「だめじゃないくせに」
「ほ、ほんとにっ!指、もう、いいっ。いらないっ」
「でも……」
「も、イきそうっ……だからはやく……っ」
「えっ、もう?」
反射的に見下ろした理人さんのそれは、いつの間にか細長い指にしっかりと握られていた。
質の良い腹筋に触れる寸前まで反り返り、溢れた滴でぬめり鈍光を放っている。
「こら、勝手に触っちゃだめでしょう」
「だ、だって……っ」
いけない左手を絡みとり、ベッドにきつく縫い付けた。
今にも爆ぜてしまいそうな欲を携えた瞳を見下ろし、とっくの昔に勃ちあがっていた自身を取り出す。
理人さんの控えめな喉仏が、ゆっくりと上下した。
「俺がほしいんですか?」
「ん、ほしいっ。だからっ……」
――いれて。
「いっ……!」
「力抜いて」
「んっ……」
きっと後ろからする方が身体の負担は少ないし、理人さん自身がその体位が好きなことも知っている。
それでも今夜は理人さんの顔を見ていたくて、そのまま腰を進めた。
「んっ、ん、んん……っ」
繋がりが深くなるにつれて、シーツを握り締める理人さんの手は血の気を失っていく。
その白い指先をそっと包み込むと、理人さんの身体からふっと力が抜けた。
開かれた奥に導かれるまま昂ぶった熱を埋めていくと、理人さんの先端から透明な滴がぷくりと溢れ出てきては、とろりと伝い落ちる。
その澄んだ雫があまりにいやらしく艶めいていて、目の奥がじんじんした。
理人さんの中は、もう俺の形になっていたりするんだろうか。
そんなスケベ極まりない考えまで浮かんでくる。
「あっ、はぁん……き、もちい……っ」
煽ってるのか、そうでないのか。
どちらにしても、心臓と股間に悪いのは間違いない。
手の持ち方を変え、力を込めて拘束する。
そして、本能に導かれるまま、何度も抜き差しした。
「やっ、はやっ、さ、さとうくん、はやい……っ」
「名前で呼んでください」
「え、英瑠……っ」
「もっと」
「える……えるぅ……」
「もっと……呼んで」
いつだったか、理人さんが言っていた。
好きの理由なんて聞くな、わからないんだから――と。
今なら、理人さんの気持ちがよくわかる。
かわいいから。
イケメンだから。
身体の相性がいいから。
世界はどこまでも広い。
探せばきっと、同じ特徴を持った人間がどこかにいるはずだ。
でも俺は、理人さんじゃないとだめだ。
理由なんてわからない。
ただひとつ、確信を持って言えること。
俺は、涙が出そうなくらい、
「英瑠っ……あ、も、いくぅ……!」
「く……っ」
理人さんが好きだ――。
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