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閑話:午後1時のフィーバー (1)
ピピピッ。
高い電子音が響く。
スポーツドリンクの入ったグラスと引き換えに受け取った体温計には、『38.4』と表示されていた。
「うわ、高いな」
汗ばんだ前髪を避けて額と額を合わせると、燃えるように熱い。
「だから移るって言ったのに」
「ただの知恵熱だって言ったのは理人さんでしょ……」
「うっ……あ、俺を無理やり病院に連れてった時に移ったんじゃ……」
「そんなわけないでしょ。一昨日のキスです!」
ああもう、と不満を吐き出し、佐藤くんは恨みがましさいっぱいに俺をじとっと睨んだ。
「ごめんごめん」
あふれ出る苦笑を隠さずにいると、佐藤くんがパッタリと後ろに倒れた。
ベッドの軋みがおさまるのを待って、冷えピッタンを貼ってやる。
「仕事は?」
「連絡しました。理人さんは……」
「年休取った」
「えっ……」
「三枝から取れ取れうるさく言われてたとこだし、ちょうどいいだろ」
「なんでそんなに嬉しそうなんですか……」
「今までは俺が看病されてばっかりだっただろ」
熱を出した時もそうだけど、あの夜とか、この夜とか、その次の日の朝とかも。
「だから、今日は俺が看病する」
「ええー……」
「大人しく寝てろよ?」
「はーい……」
タオルケットの上からポンポンすると、佐藤くんは諦めたように目を閉じた。
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