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閑話:午後1時のフィーバー (2)

さて、困った。 朝ごはんは病院に行く前に軽く済ませたけど、お昼ご飯どうしよう。 処方されてるのが食後の薬だから、飲む前に胃になにか入れた方がいいんだろう……けど。 お粥? うどん? たまごスープ? ゼリー? 桃缶……は、違うか。 お腹を壊してるわけじゃないから、普通のご飯でいいのか? ……わからない。 いやでも、熱が高いからあんまり食欲ないかもしれないし、やっぱり喉を通りやすいものの方がいいよな。 よし、お粥を作ろう! キッチン下のスペースを覗き込み、小さめの片手鍋を取り出す。 佐藤くんがよく味噌汁作りに使っているやつだ。 それから、お玉……は、どこだ? いくつか適当に引き出しを開けてみたら、銀色のがあった。 あとは……あと、は? 『風邪 お粥 作り方』 スマートフォンの入力にも、かなり慣れてきたと思う。 これも、佐藤くんとLIMEしているおかげだ。 検索ボタンを押すと、たくさんのリンク先が画面いっぱいに表示された。 佐藤くんは、いつもこの膨大な情報量の中で、セッ……の勉強をしているのか。 どうりで、いろいろ知ってるわけだ。 「あっ」 指の動きに合わせて上に流れていった画面を、少しだけ呼び戻す。 『風邪っぴきの彼氏のために作る優しい味のたまごがゆ』 うん、良さそうだ。 優しい味付けなら、食欲がなくても少しは食べられるだろう。 タップして開いてみると、写真付きのレシピが出てきた。 「ご飯を鍋に入れて、だし汁で煮込む。ぐつぐつしてきたら溶き卵を入れる……うん、これならできそうだ」 手順が複雑でなくて、ホッとする。 ご飯は……よし、炊飯器の中にあった。 残り物だけど、お粥にするなら炊きたてよりも冷やご飯の方がいいって書いてあるし、ちょうどいいだろう。 卵も冷蔵庫にあるし、最後は出汁か。 レシピの材料のところには、だし汁の出汁は『お好みで』と書かれている。 「病気の時はおふくろの味が恋しくなるものです……か。うーん……」 おふくろの味……って?

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