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閑話:午後4時の遊戯 (5)

タオルケットを目元だけ開いてそろりと盗み見ると、佐藤くんのドアップが目の前に現れた。 近い。 ものすごく。 それに、 にこにこしている。 笑っている。 なのに、 怖い。 「で、出てけって言っ……」 「われて、そのまま出てくわけないでしょ?」 「おひゃあっ!」 一気にタオルケットを剥ぎ取られ、遠くに放り投げられた。 ふわりと不自然に広がった布をひっ掴もうと伸ばした手は届くことなく、部屋の端っこまで華麗にひとっ飛びしてしまう。 なんでそんなに思いっきりオーバースローするんだよ! 「もしかして、もうイきそうでした?」 佐藤くんが、ふと俺を見下ろして笑う。 慌てて股間を隠して必死に首を振ってみたけど、きっと無駄だ。 だって、溢れ出ていた汁でテカっていた先っぽを、もう思いっきり見られてしまった。 「ちょっ!」 ぬっと当然のように伸びてきた佐藤くんの手が、俺の手首を掴み、引き剥がそうとしてくる。 俺は、膨らんだままのそこを包み込む手に力を込めた。 負けてたまるか。 見られてたまるか。 もう見られたけど。 でも! もう一度なんて絶対だめだ! 「なんで抵抗するんですか」 「するに決まってるだろ!」 ぐぐぐぐぐ。 ぎぎぎぎぎ。 俺の股間を巡る静かな攻防を続けながら、佐藤くんがまたにやりと笑う。 「念のために聞きますけど……」 「な、なんだよ!」 「今日のオカズは?」 「お、お前、聞き方がエロオヤジ……!」 「質問に答えて」 佐藤くんが眉を寄せ、首元から黒いタイを一気に引き抜いた。 うわ。 やめろ。 そんな、 そんな、 そんな―― 「な、なんでタキシードのまま帰ってくるんだよ!」 「着替える時間も惜しいくらい早く理人さんに会いたかったんで」 「ま、まさかその格好のまま電車乗って……あっ!」 「はい、確保」 ず、ずるい! また見惚れた隙を取られた! 「かわいい……理人さんのここ、震えてる」 「み、見るなよぉ……っ!」 「それで?今日のオカズは?」 まだ言うか! そんなの、 言わなくたって、 わかってるくせに! 「佐藤くんに決まってるだろ……っ」

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