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裏閑話:午後0時の事件簿<真相> (2)
「ここにサインお願いします」
「あ、はい……」
「ありがとうっしたー」
宅配便のお兄さんは、爽やかな笑顔を残して去っていった。
その背中を見送り、玄関にデンっと置かれたその箱を見つめる。
でかい。
しかも、取扱注意の赤いシールが箱全体に所狭しと貼られている。
まるで呪いのお札のようだ。
『佐藤英瑠様』
箱の上面に貼られた紙には、確かに俺の名前が書かれていた。
もちろん、住所は間違いなくここで……あれ?
「これって理人さんの字じゃ……えっ」
差出人が『神崎理人』になっている。
どういうことだ?
理人さんから俺宛ての荷物?
一緒に住んでるのに?
わけがわからないまま恐る恐る箱を揺らすと、なんの音もしなかった。
怪しい。
それに、ものすごく重い。
そういえば、お兄さんもここまで台車で運んできていたし、降ろす時も「よいしょ」と気合いを入れていた。
宅配のプロが怖気付くほどの重量。
理人さんと俺が一緒に入っても余裕がありそうな大きさの箱。
「なんだこれ……?」
トイレの扉はまだ閉まったままだ。
理人さんのあの態度から推測すると、もしかしてこれは……俺へのプレゼント、とか?
記念日でもなんでもないのに?
しかもこんなでかいものを?
いろいろ疑問は浮かんでくるけれど、当の理人さんはまだ出てきそうにないし、俺はとにかく箱を開けてみることにする。
キッチンからハサミを拝借し、段ボール箱の継ぎ目という継ぎ目にハサミの刃を滑らせる……と、まるでマジックの種明かしのようにハラリと箱が解けた。
現れたのは、黒くて四角い大きな塊。
まさか。
そんな。
なんで。
だって。
これは。
「電子ピアノ……!」
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