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終-1:午後9時の予感 (1)

どうしよう。 俺、まだ死にたくない! 「ま、理人さん」 「ん?」 「ほ、ほんとに大丈夫なんですか」 「だから大丈夫だって言ってるだろ?これがハンドルで、こっちがアクセルでこっちがブレーキ。それから、右に曲がる時はこれを下げてウインカー出して、上げたら左折。ワイパーは……あ、これだな」 シュパーッ。 そうそう。 フロントガラス汚れてたから、綺麗にしたいと思ってたんですよね。 じゃなくて! 「……理人さん」 「……なに」 「やっぱり俺に運転させてください」 「でも……」 「疲れたらちゃんと言いますから。約束します」 「……」 「ね?」 「……わかった」 理人さんがハンドルから手を離し、俺はようやくホッと胸を撫で下ろしたのだった。

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