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終-1:午後9時の予感 (18)

「んっ……ん、んく……っ」 うっかり息が届いてしまいそうな距離で、理人さんの尻が揺れている。 なんという光景だろう。 露わになっている面積より浴衣に隠れている方が広いのに、時折視界を掠める白い肌の欠片がいつになく積極的に情欲を煽ってくる。 これぞ、究極のチラリズム。 熱い口内が俺の昂ぶりを根元まで咥えこみ、じゅぶじゅぶとはしたない音を立てながら愛撫していた。 時には優しく、時には激しく。 絶妙な緩急をつけながら、いつ臨界点を突破してもおかしくないそれを確実に追い詰めてくる。 ふいに唇で横っ面を挟み込まれ、喉の奥が閉まった。 ――生きててよかった。 全身をビリビリと震わせるほどの快感に、思わず思考が壮大になってしまう。 「理人さん……」 「きもひいい?」 ひどい愚問だ。 良くないわけがない。 「これからは服脱がずにセックスしましょう」 「んっ……なんで……?」 「だってむちゃくちゃエロい」 隙間から手を差し入れ、物欲しそうに揺れる腰のラインを辿る。 浴衣の裾をたくし上げると、長い脚の間にぶら下がるそれが見えた。 いや、という表現は正しくない。 なぜなら、それは再び起ち上がり、刺激を求めて震えている。 手のひらを上にして受け止めるように包み込むと、それはかわいらしく痙攣した。 尻肉の間に佇むそこが、きゅっと窄まる。 先ほど戯れたときの名残で薄紅色に光るそこを、指先でつついた。 「あっ……」 「もう挿れたいです。いい?」 振り返った瞳が、音のない答えをくれる。 理人さんの下から身体を引き抜き、はやる気持ちを押し隠してゴムを装着した。 「どっちがいい?」 「うしろ、から……」 繊細な両手がおずおずと尻肉を割り、素直に俺を強請ってくる。 先端を押し付けると、理人さんの鼻が甘い空気を押し出した。 畳の上に広がった手の先が、次第に血の気を失っていく。 すべてを埋めるころには、理人さんの白い爪先が畳を薄く削っていた。 「あっ……あっ……あっ……!」 なかをぐりぐりと抉ると、紺色の背中が大きくしなる。 熱の中心からは透明な雫がとめどなく溢れ、パタパタと音を立てながら畳を汚した。 「理人さん、いきんで」 「え、いき……?」 「そしたら奥、開くから」 「奥、って……これ以上奥なんてないだろ……っ」 「やってみてください、お願い」 理人さんの涙目が、俺を睨む。 ――またなにか検索したな! ――そりゃするでしょ。泊まりがけの旅行なんだから。 視線だけで会話を交わすと、薄い唇がわなないた。 「この変態!」 「絶対気持ちいいいから……ね?」 頑なだった理人さんの表情が変わったのを、俺は決して見逃さない。 ここでダメ押しだ、と眉を持ち上げて唇を噛んでみせると、理人さんの顔がそっぽを向いた。 上気した頰が、僅かに膨らむ。 すると、俺を包み込んでいた内壁が奇妙に蠢いた。 「んっ……んんぅ……」 「そうそう、上手」 「あ、あっ……?」 「ほら、入った。気持ちよくない?」 「お、なか、くるしい……!」 いやいやと首を振る理人さんの背中に覆いかぶさる。 下腹部を弄りそっと握り込むと、焦れた欲に塗れたそれは、俺の指の間でぐちゅりと音を立てた。 理人さんの喉の奥から熱い息が漏れ、強張っていた背中の筋肉が緩む。 同時に、最奥まで達していた自身を引き抜いた。 「ひぃあっ……!」 「好きです、理人さん」 心の底から溢れてくる想いを、耳に直接注ぎ込む。 欲望のままに抜き差しを繰り返しながら、それでも今、俺の心を支配しているのは恥ずかしいくらいに純粋な気持ちばかり。 ありったけの想いを、注ぎ込んでやりたかった。 この怖がりな恋人が、もうひとりで泣くことがないように。 「さ、佐藤くん……っ」 「好きです」 「だ、だめ、言うな、もうっ……」 「好き」 「あ、いく……!」 ぶるりと身体を震わせ、理人さんが二度目の絶頂を迎える。 収縮した筋肉に搾り取られるように欲を吐き出しながら、俺は心に沁みわたる幸福感をただ噛み締めていた。

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