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終-3:午前10時の旅立ち (3)
「理人さん、お風呂お先です。シャンプー詰め替えときました」
「ありがとう。じゃあ、俺も入ってくる」
「はい、ごゆっくり」
ソファから腰を上げ、理人さんは気持ち良さそうに伸びをした。
テレビ画面には、バラエティー番組が映し出されている。
お店の人気メニューをランキング10位まで当てるまで帰れないというアレだ。
今日はサーティースリーアイスクリーム特集だから絶対見ているとは思ったけれど、ハードディスクの録画ボタンまで光っていたから、思わず笑ってしまった。
「理人さん」
「んー?」
「気になるフレーバーありました?」
「あー……ジャマイカモカモカ……いや、違うな。ジャーマンモッツァレラ……あれ、違うか?」
「プッ」
「……とにかく、この秋限定のやつ」
「じゃあ、この週末食べに行ってみましょうか」
「えっ……あー、うん。行く」
理人さんの頰がほんのりとピンク色に染まった。
まるで照れ隠しだと言わんばかりに、着ていたスウェットを勢いよく脱ぎ捨てる。
すると、引き締まった肌色がぶるりと震えた。
「さむっ!」
「夜はもう冷えますからね。しっかりあったまってきてください」
「うん」
素直に頷き、理人さんは踵を返した。
脱いだスウェットを上半身に巻きつけて、いかにも寒そうに歩いていく。
「あ、そういえば」
「はい?」
「携帯、鳴ってたぞ」
理人さんは、また縮こまりながら歩いていった。
浴室の扉が閉まる音を聞き届け、スマートフォンのロックを解除する。
『理人、どう?』
木瀬さんからのLIMEだった。
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