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終幕 (3)

食事を終え戻ってきた父さんたちと入れ替わりに、病院を後にする。 道路を挟んで向かい側のバス停留所に着くと、隣から深く、長いため息が聞こえた。 「生まれたての赤ちゃんってあんなにちっこいんだな……」 「可愛かったですね」 「うん。でも怖かった……!」 「理人さん、抱っこする手が震えてましたもんね」 「だってあちこちふわふわだし、グラグラだし、ふっにゃふにゃだし……あーでもかわいかった!」 今は空っぽになってしまった両手を見下ろし、理人さんがほうっと息を吐いた。 興奮冷めやらない様子のアーモンド・アイが、夕陽を反射してキラキラと輝いている。 まったく……かわいいのはどっちなんだか。 「もしかして、子供欲しくなりました?」 「えっ?」 「絶対に無理ってことはないと思いますよ。俺か理人さんのどっちかが父親になるとか、養子を取るとか、探せば方法はあると思います」 もちろん一筋縄ではいかないだろうけれど、俺も考えたことがないわけではないし、子育ても理人さんとなら頑張れる気がする。 「どっちにしても入籍が先ですけど、理人さんが望むなら俺は……」 「やだ」 「へっ……?」 「いらない、ほしくない」 「そ、うなんですか?」 「だって、子供に佐藤くん取られたくない……」 ……ああ。 ああ、もう。 あああああああああもう、この人はまったく! 「んっ……ふっ……う」 衝動に突き動かされるままに停留所の陰に引っ張り込み、尖っていた唇を掬い取る。 すぐに応えるように舌が差し出され、でも捕らえる前に遠ざかってしまった。 俯いた理人さんの頰が赤い。 「理人さん?」 「最近その、薬、減っただろ」 「そうですね」 「だから……その、今夜……」 「今夜?」 「……したい」 「理人さん……ほんとに?」 「……うん」 ほんのりと熱を帯びた額が肩に埋もれ、冷えた指先が俺の手から体温を奪った。

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