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終幕 (6)

「久しぶりだから、ゆっくりしますね」 「……ん」 「お尻向けて」 こくりと頷き、理人さんは躊躇いながらもうつ伏せになった。 なだらかに傾斜する背中が、引き締まった臀部へと続いている。 その勾配は一切の無駄を省いた芸術のように白く、美しい。 「ちょっ……」 「ごめんなさい、つい」 「……もう」 つう……と坂道を辿っていた指を引き戻し、代わりにローションのボトルを手に取った。 蓋を押し開けぎゅっと握りしめると、透明の液体がトロリと割れ目を伝い落ちる。 後ろ姿が痙攣し、理人さんが枕に顔を埋めた。 なんだか、ものすごく悪いことをしている気分だ。 激しい既視感(デジャヴ)を覚えながら、艶めく秘部を人差し指で探り当てる。 すると、あっさりと爪先が飲み込まれた。 「ふっ……ぅん……」 「あれ、なんか柔らかい。もしかして、お風呂で弄りました?」 「ちゃんとできるか不安だったから、ちょっとだけ……んぅっ」 ぐぐ、と指を進めると、すでに柔軟に解れていたそこが、まるで歓迎するようにどんどん奥へと引き入れていく。 本当に自分で準備したんだ――俺を受け入れるために。 風呂の鏡に尻を向けながら真っ赤な顔で指を抜き差しする理人さんを想像したら、まぶたの裏がかぁっと熱くなった。 「ひあっ……あ、あ!」 「痛くない?」 「だい、じょぶ、あ、んあぁっ」 二本に増やした指で、ふわふわの内壁を少しずつ押し拡げていく。 ふいに、指の腹をコリコリした感覚が通り過ぎた。 引き戻してもう一度そこを撫でると、理人さんがかわいく呻く。 ああ、そうだ。 ここが、理人さんのいいところだ。 「あっ……やっ……いや……!」 「いや?ほんとに?」 「そ、そこはっ……だめっ……ん、んんっ」 くぐもった声で喘ぎながら、快楽から逃げ惑うように理人さんが腰をくねらせる。 そのたびにシーツと下腹部が擦れ合い、ぬちゃぬちゃと粘質な音を立てた。 「理人さん……」 「あっ!」 肩口に歯を立てると、理人さんの後頭部が左右に振れる。 まるでなかに閉じ込めようとするかのように、人差し指と中指が強い力に締め付けられた。 「んっ……ん、んぐ、ぅ……っ」 苦しそうな声が喉の奥から搾り出され、次から次へと枕に吸い込まれていく。 しまった。 急ぎすぎたかもしれない。 「理人さん、大丈夫?」 「も、いくぅ……っ」 「えっ!」 慌てて指を引き抜き理人さんの身体をひっくり返す――と同時に、白いなにかが素早く視界を横切った。 「ひ、ぅん――ッ!」 細いシルエットがビクビクと痙攣し、その中心で理人さんの欲望が弾けていた。 小刻みなリズムを刻みながら、ぴゅくぴゅくと飛び出した白濁が腹筋を汚していく。 噛み締められた指が、漏れ出ようとする声を遮断していた。 「はっ……はぁっ……」 吐精が止むと、少し遅れて全身の筋肉が弛緩する。 きつく閉じていたまぶたがゆっくりと押し上げられ、透き通った世界に俺の姿が反射した。 途端に、輪郭の歪んだアーモンド・アイから涙がぶわぁっと溢れ出てくる。 「び、びっくりした……っ」 「えっ」 「こ、こんなに早くイきたくなかったのに……」 「……」 「が、我慢できなくて、こ、怖かった……!」 「うん、そうですよね」 無理もない。 ざっと一年半ぶりの射精なのだ。 子供のようにしゃくり上げる理人さんを抱きしめ頭を撫でると、背中に腕が巻きつきぎゅうぎゅうと締め上げてくる。 あ、また既視感(デジャヴ)。 いつかの夜も、怯えて震える理人さんをこうして抱きしめた。 去年のことなのに、なんだかもう遠い昔の出来事のような気がしてくる。 その時はお互いこんな風に人肌を感じる姿じゃなかったし、もちろん、ドロドロでもグッチョグチョでもなかったけれど。 「ふぅ……」 「落ち着いた?」 「……うん」 「続き……」 「したい」 食い気味に届いた返事に、俺は笑った。

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