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第4話
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「ねぇ、才 ちゃーん!コンパス貸してー!明日算数で使うんだ」
「……爽良 、自分のどうした?」
「えーと、分解したら壊れた」
「はぁ?分解?アホかお前は。全くもう、ほら!ちゃんと返せよ」
「わーい!ありがと!おやすみー!」
「今夜は冷えるから、ちゃんと布団被れよ!おやすみー」
現在、日曜日の午後10時。
自室にやって来た六年生の弟の爽良にコンパスを貸してやり、部屋のドアをパタンと閉めた。
小野瀬 才 18歳。
現在高校3年生。
ただ今受験に向け忙しいこの時期だけど、今夜は寒くてとりあえず凄く眠い。
冷えるこの季節は本当嫌いで、オイルヒーターを付け、もこもこパーカーのフードを被りベッドに寝転がりごろごろする。
親が大学に行けと言っているので、とりあえずは受験勉強をしているけれど、正直言ってやりたいことがみつからず、ただ机に向かって勉強している毎日だ。
そもそも勉強好きじゃないし……
でも本を読むのは割と好きだから、好みの文庫があればずっと読んでられるけど、キラリと光る親の目があるので今はそれも控えている。
スマホを弄れば嫌な顔するし、リビングでTV見てれば小言を言われる。
身体を動かすのは好きだけど、水泳部を引退してからはスポーツをする時間もあまりとれず、最近はストレスが溜まっている状態だった。
日中に勉強は結構やったし、もう寝ようかな……
本当寒い……
こう寒い日はさっさと寝るに限る。
部屋の灯りを消してベッドへともぐり、至福の時間を味わう。
わあー!
布団気持ちイイ!
明日は学校かぁ……朝ちゃんと起きれるかな。
そう思いながら瞼を閉じた。
瞼を閉じれば一瞬で睡魔に襲われ、あっという間に眠りについた。
再び目が覚めるときは、冷え込んだ朝でいつも通り変わらない毎日が続く。
そう思っていた。
そう思っていたのに、運命とはおかしなもので、あんな予定は未定な出来事が俺に起こるなんて予想してなかったのだ。
こんなの絶対おかしい!!
こんな運命絶対ありえない!!
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