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第11話

******** 「か、母さーん……?」 「才!聞いた!?ルースさん、才の部屋のクローゼットの中からいらしたんですって。あのクローゼットね、向こうとこちらを繋ぐのにサイズが丁度いいんですってよ。ジャストサーイズ!あんたが涎垂らして寝こけてる間に、母さんも(つね)さんも向こう側を確認したから間違いないわ。ねぇ常さん」 は、ちょっと待て?俺が寝てる間に俺の部屋で何してんだ貴方達? 「うん……凄かったねぇ。ワクワクしちゃったなぁ。おっと時間だ。行ってきます」 「はーい!行ってらっしゃい」 何気無いいつも通りの朝って雰囲気を醸してるけど違う! うちの家族は父さんを筆頭に呑気な性格だけど、限度がある。 怪しい人物がうちのクローゼットから出入りをしているなんて明らかにおかしいだろ! って俺が朝クローゼットを確認した時は何も変わらないいつものクローゼットだったのに。 「扉ってずっと開いている訳じゃないみたいよ。すぐに消えてしまうんですって。だから才が見た時は何もなかったのね。はい、ご飯。さっさと食べて学校行きなさい。爽良ー!遅刻するわよー!」 「だ、だけど!スゲー怪しくない?」 「学校から帰って来たらゆっくり話しましょう。疑うのも無理はないと思うけど、トリックとか詐欺でもなさそうだし?凄いのねー!異世界って本当にあるのね!ファンタジーよ!ファンタジー!!」 「は、はぁ……」 うちの母親、小野瀬 咲和(おのせ さわ)は小説家だ。 もとは看護師をしていたけれど、処女作が話題となり、執筆活動に専念するために退職。 主にミステリー小説を書いているけど、ファンタジーものや時代小説も書いていて空想力や妄想力?は長けていて、かなり性格はユーモアだ。 そしてさっき出勤していった俺の父親は、常さんこと小野瀬 常義(おのせ つねよし)。 大学の先生で主に生物学を教えている。 おっとりのんびりマイペースの三拍子そろった父さんは見ての通り何事にも動じない。 うちの家族って大分世間と感覚がずれている気がするんだけど…… その家族に自分もはいっているんだよなぁと溜息をつきながら、美味しそうな目玉焼きがのったトーストにかじりつくのであった。

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