11 / 88
第11話
********
「か、母さーん……?」
「才!聞いた!?ルースさん、才の部屋のクローゼットの中からいらしたんですって。あのクローゼットね、向こうとこちらを繋ぐのにサイズが丁度いいんですってよ。ジャストサーイズ!あんたが涎垂らして寝こけてる間に、母さんも常 さんも向こう側を確認したから間違いないわ。ねぇ常さん」
は、ちょっと待て?俺が寝てる間に俺の部屋で何してんだ貴方達?
「うん……凄かったねぇ。ワクワクしちゃったなぁ。おっと時間だ。行ってきます」
「はーい!行ってらっしゃい」
何気無いいつも通りの朝って雰囲気を醸してるけど違う!
うちの家族は父さんを筆頭に呑気な性格だけど、限度がある。
怪しい人物がうちのクローゼットから出入りをしているなんて明らかにおかしいだろ!
って俺が朝クローゼットを確認した時は何も変わらないいつものクローゼットだったのに。
「扉ってずっと開いている訳じゃないみたいよ。すぐに消えてしまうんですって。だから才が見た時は何もなかったのね。はい、ご飯。さっさと食べて学校行きなさい。爽良ー!遅刻するわよー!」
「だ、だけど!スゲー怪しくない?」
「学校から帰って来たらゆっくり話しましょう。疑うのも無理はないと思うけど、トリックとか詐欺でもなさそうだし?凄いのねー!異世界って本当にあるのね!ファンタジーよ!ファンタジー!!」
「は、はぁ……」
うちの母親、小野瀬 咲和 は小説家だ。
もとは看護師をしていたけれど、処女作が話題となり、執筆活動に専念するために退職。
主にミステリー小説を書いているけど、ファンタジーものや時代小説も書いていて空想力や妄想力?は長けていて、かなり性格はユーモアだ。
そしてさっき出勤していった俺の父親は、常さんこと小野瀬 常義 。
大学の先生で主に生物学を教えている。
おっとりのんびりマイペースの三拍子そろった父さんは見ての通り何事にも動じない。
うちの家族って大分世間と感覚がずれている気がするんだけど……
その家族に自分もはいっているんだよなぁと溜息をつきながら、美味しそうな目玉焼きがのったトーストにかじりつくのであった。
ともだちにシェアしよう!