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第16話
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「才~行って来なさいな。ルースさんが可哀想」
「……」
「主さんの具合相当悪そうじゃない。熱で魘されてるんでしょ?辛いわよ~。体力にも限界があるしさ。才が行って良くなるかもしれないなら、協力してあげたら良いじゃない……」
確かに……確かに具合が悪いのは気になる。
高熱が下がらないと、食べるのも辛いし身体がキツいんだよな……インフルエンザの時超つらかった。
医者でもない、赤の他人の俺が行っても無駄な気がするけど……
こんなに真剣にお願いされたら、断りきれない。
「わ、わかったよ。行くよ行く。行けばいいんだろ!」
「才様!……ありがとうございますっ!」
「だけど、俺が行っても……ぐぁ!」
意味ないと思うけど……って言いたかったけれど、ルースに抱きしめられ息が詰まり言えなかった。
く……苦しい!
ルースの体型と比べると、俺はなんて小さいんだと心の中で呟く。
抱きしめられている今俺はほとんど宙に浮いている状態だ。
「ぐ、ぐるしいから!」
「は!大変失礼致しました!では、才様早速参りましょう!ご案内致します!」
「……少しだけだからな」
「承知しております!本当に……ありがとうございます!」
「こっちは適当にやっておくから心配しないで。行ってらっしゃいな~~」
……この間まで勉強勉強言ってた、この母をちょっと殴ってやりたい。
絶対楽しんでやがる!
「それでは才様、参りましょう」
「う、うん……」
行ったことのない知らない世界……
異世界なんて本当にあるのか……いまいち理解し難いけど、どうやらマジであるらしい。
そしていつものように?二階へ上がり、俺の部屋へ。
ここが異世界の入口だなんておかしくないか?
そう思いながら自分のクローゼットの前に佇む。
ファンタジーの物語で、タンスが異世界の入口だったりしたのもあったっけなぁ?
そんなあり得ないことが今目の前で起こっている……
信じられないけど、信じるしかないや……
ぽっかりと開いた黒い空間が目の前に広がっていて、足元には草木が生い茂る道が広がっている。
……
ドキドキ緊張しながら、俺は一歩二歩とクロゼットの中へ吸い込まれて行った。
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