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第16話

******** 「才~行って来なさいな。ルースさんが可哀想」 「……」 「主さんの具合相当悪そうじゃない。熱で魘されてるんでしょ?辛いわよ~。体力にも限界があるしさ。才が行って良くなるかもしれないなら、協力してあげたら良いじゃない……」 確かに……確かに具合が悪いのは気になる。 高熱が下がらないと、食べるのも辛いし身体がキツいんだよな……インフルエンザの時超つらかった。 医者でもない、赤の他人の俺が行っても無駄な気がするけど…… こんなに真剣にお願いされたら、断りきれない。 「わ、わかったよ。行くよ行く。行けばいいんだろ!」 「才様!……ありがとうございますっ!」 「だけど、俺が行っても……ぐぁ!」 意味ないと思うけど……って言いたかったけれど、ルースに抱きしめられ息が詰まり言えなかった。 く……苦しい! ルースの体型と比べると、俺はなんて小さいんだと心の中で呟く。 抱きしめられている今俺はほとんど宙に浮いている状態だ。 「ぐ、ぐるしいから!」 「は!大変失礼致しました!では、才様早速参りましょう!ご案内致します!」 「……少しだけだからな」 「承知しております!本当に……ありがとうございます!」 「こっちは適当にやっておくから心配しないで。行ってらっしゃいな~~」 ……この間まで勉強勉強言ってた、この母をちょっと殴ってやりたい。 絶対楽しんでやがる! 「それでは才様、参りましょう」 「う、うん……」 行ったことのない知らない世界…… 異世界なんて本当にあるのか……いまいち理解し難いけど、どうやらマジであるらしい。 そしていつものように?二階へ上がり、俺の部屋へ。 ここが異世界の入口だなんておかしくないか? そう思いながら自分のクローゼットの前に佇む。 ファンタジーの物語で、タンスが異世界の入口だったりしたのもあったっけなぁ? そんなあり得ないことが今目の前で起こっている…… 信じられないけど、信じるしかないや…… ぽっかりと開いた黒い空間が目の前に広がっていて、足元には草木が生い茂る道が広がっている。 …… ドキドキ緊張しながら、俺は一歩二歩とクロゼットの中へ吸い込まれて行った。

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