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第18話

眠っていることに内心ホッとしつつ、何故か「それ」が気になった。 この闇の中でも確認したくなるほどに。 思い返してみれば、俺が何かを気にする気になることなんて今までにない不審な行動だ。 見たところ「それ」は普通の子供のよう。 フードを被っていて、顔の一部しか見えない。 普通に眠っているだけなのに、何故かその寝顔から視線を外すことができなかった。 …… 閉じられた瞳に睫毛、小さな鼻や柔らかそうな白い頬、厚ぼったい唇に釘付けになる。 そしておかしなことに、自分の心拍数が見る見る上がっていくのを感じ激しく動揺した。 ドキン…… ドキン…… おかしい…… これは……なんだ。 こいつは……誰だ? ただの寝顔を何故俺はこんなにも見ているのだろう。 そして……気がついたら無意識にその頬に触れて…… …… 吹っ飛ばされ、殴られた…… 俺としたことがそれに怯んでしまいノコノコと逃げ帰ってきてしまったのだ。 しかもそのまま高熱で倒れ、ベッドから起き上がれないというこの醜態!! 屈辱! 絶対殴ってやる! 半殺しにして殺してやる! 今に見てろっ! ……クソ…… あぁ……また動悸が激しくなり、体温が上がるのが分かった。 身体が更に弱っていくのを感じる。 「やはり……死ぬのか……」 「死にませんって。本当にお判りになられてないのですね」 「……ルース。お前の言っている意味がわからない……」 「その御方をここへお連れ致します。それで意味がわかるはずです」 「……へぇ。連れて来るか。殺していいの?」 「……貴方がそうしたければどうぞ好きなように。わたくし暫く席を外しますので、部屋余り汚さないでくださいね。片付けるモノがいませんから。では、失礼致します」 そう言ってルースが寝床から出て行ったのが……いつだ? 連れて来るというのは嘘ではないはず。 あれがここに引きずられてやってくるか……それは楽しみだ。 しかし…… そう思えば思うほど胸は締め付けられ、俺の容体は悪化していく。

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