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第20話
この綺麗な扉の向こうに、ルースの主って奴がいるのか。
一体どんな奴なんだろう。
具合は大丈夫なのかな?
熱……まだあるのかな?
「才様、こちらは我が主の寝室でごさいまして、これからこの中へ入ります。しかし決してベッドへは近づかないように御願い致します」
「ベッドに?なんで」
「……死……いえ、万が一ですが才様に病気が移ったら大変ですので念のため。わたくしから離れないよう。良いですか?」
「はーい」
俺が返事をしたのを確認すると、ルースがカチャリと扉を開ける。
中は想像していた寝室よりもはるかに広く、その部屋の中央には美しい天蓋付きのベッドが設置されていた。
こういう天井からカーテンみたいな布が垂れてるベッドってはじめて見たなぁ。
薄い布が幾重にも重なっていて、その中を確認することはできない。
「マリー様、例の方をお連れ致しました」
「……」
マリー?
マリーって、女の子みたいな名前。
そいつの名前なのかな?
けれど中からの反応はなくシーンと静まり返っている。
いる……んだよね?
寝てるのかもしれない。
「マリー様……」
「もしかして、寝ちゃってるかもしれないですよ」
そう俺がルースに話しかけたその時、
「ルーース」
中から確かに聞こえた澄んだ声。
「ルース。お前なぜそこにいる」
「はい、例の御方才様をお連れ致しました。才様が一人では不安だと言うことでして、わたくしが付き添っております」
ん?
「お前はここから出て行けバカ」
え?ば、バカ?
「……それはできません」
「へぇ殺されたいかルース。こっち来いよ」
え?え?何この会話。ヤンキーなの?殺すって……
「え、殺すって本当に殺すの?」
「……」
「……あ、あの、才様……」
「……ルース黙れ。行けよ」
え、え、ルースが苦しそうに俺の横で困った表情を浮かべている。
どうしてそんな辛そうにしているのかわからない。
ルースは俺を暫く見つめ、今にも泣きそうだった。
そして何か言いたげな顔をし無言で一礼し、そのまま部屋を出て行ってしまった。
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