20 / 88

第20話

この綺麗な扉の向こうに、ルースの主って奴がいるのか。 一体どんな奴なんだろう。 具合は大丈夫なのかな? 熱……まだあるのかな? 「才様、こちらは我が主の寝室でごさいまして、これからこの中へ入ります。しかし決してベッドへは近づかないように御願い致します」 「ベッドに?なんで」 「……死……いえ、万が一ですが才様に病気が移ったら大変ですので念のため。わたくしから離れないよう。良いですか?」 「はーい」 俺が返事をしたのを確認すると、ルースがカチャリと扉を開ける。 中は想像していた寝室よりもはるかに広く、その部屋の中央には美しい天蓋付きのベッドが設置されていた。 こういう天井からカーテンみたいな布が垂れてるベッドってはじめて見たなぁ。 薄い布が幾重にも重なっていて、その中を確認することはできない。 「マリー様、例の方をお連れ致しました」 「……」 マリー? マリーって、女の子みたいな名前。 そいつの名前なのかな? けれど中からの反応はなくシーンと静まり返っている。 いる……んだよね? 寝てるのかもしれない。 「マリー様……」 「もしかして、寝ちゃってるかもしれないですよ」 そう俺がルースに話しかけたその時、 「ルーース」 中から確かに聞こえた澄んだ声。 「ルース。お前なぜそこにいる」 「はい、例の御方才様をお連れ致しました。才様が一人では不安だと言うことでして、わたくしが付き添っております」 ん? 「お前はここから出て行けバカ」 え?ば、バカ? 「……それはできません」 「へぇ殺されたいかルース。こっち来いよ」 え?え?何この会話。ヤンキーなの?殺すって…… 「え、殺すって本当に殺すの?」 「……」 「……あ、あの、才様……」 「……ルース黙れ。行けよ」 え、え、ルースが苦しそうに俺の横で困った表情を浮かべている。 どうしてそんな辛そうにしているのかわからない。 ルースは俺を暫く見つめ、今にも泣きそうだった。 そして何か言いたげな顔をし無言で一礼し、そのまま部屋を出て行ってしまった。

ともだちにシェアしよう!