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第21話

…… …… えーと? 俺はどうすればいいのか? ベッドに近づいちゃ駄目だって言われたけど、ここから声をかけるのにも結構距離がある。 どうしようかと思案していると、向こうから声がかかった。 「おい。そこで何してんだよ。こっちへ来い」 「え、行っても大丈夫なの?」 「……」 「……」 む、無視ですか? 何か怒ってる? とりあえず行っても平気なのかな。 ベッドまでの距離およそ10m。 そろりそろりと少しづつ近づいてみる。 みるけど……みるけど……ちょっとこれはまっずぐ進めない。 入った時から思ってたけど、何か大量の本が床のあちこちに散らばっているし、謎の鳥の様々な不気味なオブジェが無造作に置かれていたりしてハッキリ言って汚い。 ひとつひとつはとても高級そうなのになぁ…… え、あの巨大な角は何だ?本物?本物だったら父さんが大喜びしそうな一品だな。 「あの……具合が凄く悪いって聞いたんだけど、大丈夫?……ですか」 「……」 「熱は下がった?気持ち悪くない?薬とか飲んでるのかな。えーと、ちゃんと食べれてますか?」 「もっと……こっちへ来い……」 残り2mの所で立ち止まると、中にいるだろうその人物が気配が少し動くのがわかる。 寝返りを打ったのか寝具が音もなく軋み、微かにレースのカーテンが揺らいだ。 大量の本はベッドを囲むように積まれていて、まるで主を守っているかのように見える。 俺がどうしようかと戸惑っていると、 「なぁ……ツラくて……起き上がれないんだ。手伝ってくれないか?」 「え、大丈夫?」 咄嗟に身体が勝手に動いてしまった。 焦ってカーテンに手をかけたその時、ガシリと手首を掴まれ、身体が引っ張られる。 へ? っと思った時には視界がひっくり返り、背中には柔らかい感触。 それと何かわからないサラサラしたものが降り注ぐ…… 「はい、いらっしゃい。直ぐにあの世に逝かせてやる。何か言い残したことはないか?」 「……っ!」 「ないよなぁ?第一喋れないものな?」 ! 喉元を絞められて、声を出すことも息をすることもできない。 それよりもなによりも、突如として目の前に現れたその人物に目を奪われ、俺は呼吸をすることも抵抗することも忘れてしまっていた。

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