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第23話

「確かに殴ったけど、ってあれってやっぱり君だったの?だったらゴメン痛かった?」 「痛くねーよ。いきなり殴りやがって」 「そっか良かった。だけどさ、夜中に知らない人が突然部屋にいたら誰だってヤバいって思うだろ?金縛りにまであって俺スゲー怖かったんだから正当防衛だよ!って……なに……してるの」 覆い被さるようにマリーが俺に馬乗りになり、至近距離で俺の顔をガン見しているのだ。 ……近い…… この人の視線異様なんだけど? だけど瞳が吸い込まれそうに綺麗で見とれてしまう。 「……あの時は、お前の髪……見えなかった……瞳も……」 ふわり……と指先で前髪を撫でられ、何のことを言われているのかよく分からなかった。 それでもあの時とはマリーが俺の部屋に侵入した時のことではないかと気がつく。 そうか、あの時寒かったからパーカーのフード被ったまま寝てたんだ…… 「……お前名前は」 「サイ。小野瀬 才……」 「サイ……才……才か」 「……」 うおお……俺のことをずっと見つめるから戸惑うよ!でもさっきみたいに首を絞められることはなさそうなので少しホッとした。 …… えーと? いつまでこの体制なのかな?ままこうしてろってことですか? …… えーとえーと??? 「マ、マリーさん?」 「……マリーでいい。才……」 暫くすると俺の顔や首筋に鼻先を近づけスンスンと匂いを嗅ぎ始めた。 「ええ!何?何?えっとあの?もしもーし!く、くすぐったいんだけど!」 「……」 「あの!あのぉ……」 「ふむ……そうか……」 「……?」 「……少し……寝……る……」 え!寝る? え?え!!? 目の前のマリーは半目になり、そのまま俺に覆い被さったまま、あっという間に眠りについてしまった。俺はというと、マリーの下敷きになってあわあわと混乱中。それでも何とか身体をずらし下敷きから解放された。 彼はそのままピクリともしない。 良く寝てる……? なんだろう。 沢山寝ているはずなのに、眠りは深そうだ。 あ、高熱が続いていたみたいだし、そのせいで良く寝れていなかったのかな。 額を優しく撫でてやり前髪の生え際をなぞるように指先で触れてみる。熱は思ったより高くなさそうだ。 ……髪柔らかいなぁ……見れば見るほど綺麗な顔をしている。 男だけど睫毛も長いし鼻筋も通っていて美人さんだ。 だけど変な奴…… こいつがルースの主なのかぁ。あの晩、うちに来た化け物の正体……全く人騒がせな…… 気が抜けたのと、このベッドのふかふか感と適度な人のぬくもりが気持ち良い。 だけどここで寝るわけには行かない。そろりそろりとベッドから下りようとしたその時、再び引き戻され思い切り抱きしめられてしまった。 え!この人寝てない!? いや……ね、寝てる!? は、離してっ!もがいてもピクリともしない腕の中で暫く抵抗したけど、むなしく力つきた俺がいた。

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