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第28話
マリー
「……で、北の森林で起きた不信な火災は早急に鎮火済み……とあるが、これに紛れて向こうからの侵入の気配は今のところないと……」
「自然発火かと思われますが、念のため調査隊を派遣しております。北の動きは最近活発化しておりますので」
「あの手この手を使って来ますからね……また痛い目に合わないとわからないのでしょうか」
「頭の悪い臭い連中だからな。掻き回してやらないとわからないんだろう……」
「……エグいのはお止め下さいよ、マリー様」
「生臭いのは嫌いか?コナー」
「っ……度を越した血が嫌なだけです。吐き気と胸焼けして堪らない。オークの血は臭いので浴びると暫くその臭いがとれません」
「ちゃんと風呂入れよ」
「は、入ってます!何回も洗うが臭いがとれない気がしてっ!って何の話をしてんだ!」
「コナーが臭い話、だろ?」
「き、きーさーまー!いつぞかの北での戦闘の恨み忘れていないからな!オーク軍の中枢に足蹴りして突き落としやがって!あの時マジで死んだと思ったんだからな」
「まあまあコナー落ち着いて。あの後ちゃんとマリー様が助けて下さったじゃないですか。……肉山の中からですけど」
「あの時のお前、真っ青で死人みたいな顔してたよなぁあはははは」
何日か床に臥せっていたせいで、溜まった仕事は山積みで次から次へと溢れてくる。
それでも体調もすっかり回復したおかげで、順調に公務をこなせ、若干冗談を言う余裕もできてきた。
「まぁ、何はともあれマリー様の体調が戻られて安心致しました。本日は後、書類を頂けさいすれば、我々は退散致しますので」
コツコツと足音を立てながら長い廊下を歩き自室へと向かう。
プンプン怒っている感情動物のコナーに比べるとノラは冷静で聡明だ。
溜まりに溜めている書類は自室に置きっぱなしで、痺れを切らした家臣二人は回収するまで離れそうにない。
バンと勢いよく自室の扉を開けると、
「うわ!」
……と声が部屋の片隅から聞こえてきた。
その方を見ると、女がソファーの影に隠れるのが見えた。
女?
……いや……
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