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第34話
……
……
ひっく……
ひっく……
「お前……」
「うう……ぐす……」
「俺に抱かれる気あるのか?」
「……あ、あるわけないだろ!」
抱かれるってなんだよそれ!!
「じゃ、なんでそんな姿してんだ?俺のこと抱いてくださいって言ってるようなものだろ?」
「こんな服着たいなんて一言も言ってないし!俺の着てた服返してくれないし!ルースは笑って誤魔化すし!それに早くうちに帰してくれよ!」
「……」
「そもそも嫁になる気なんてないんだから!」
マリーに向かって泣きながら叫んだ。
高校3年男子学生、ひっさしぶりに大泣きしてます。
弟には見せられない情けない姿。
「へー面白い。俺の嫁にはならないってことか」
「そ、そうだよ。ん!」
涙で濡れた瞼を指先でそっと拭われた。
もうマリーは俺の身体を触るようなことはしていない。
スカートの裾を指先で摘まんでひらひら遊んでいる。
「ルースが笑っているときはろくな事考えていない時だ。恐らく才が着ていた服は笑いながら処分していることだろう」
「え」
「それと恐らくと言うか、このままだと確実に才をもとの世界へ帰す気はないと思うぞ。やっとみつけた大事な嫁をそう易々と手放すなんてことはしない」
「は」
「言っておくけど、嫁とか運命の相手とか言ってこちらが勝手に決めたように聞こえるようだけど、違うからな。誰でもいいわけではない。前もって示されるだけで、きちんと互いに惹かれ相思相愛になる相手が選ばれる。これは俺だけの意志じゃないからな」
「……」
「才……お前の意志もそこに組み込まれているから成立するんだ。ルースから聞いてないだろう」
「……嫁に選ばれたってことしか……詳しくは聞いてない……え、ってことは……俺はマリーのことを好きになるって……ってこと」
「そういうこと。今までそんな勝手なこと先に決めてんじゃねぇって思っていたけど、あの夜、才の部屋に侵入した時に気がついた。自分の肌に馴染む空間があってそこにお前がいた。警戒心の塊のような俺の鎧すべてを引き剥がされてしまう……そんな危機感を覚え全力で警戒したけど無駄だった。その反動が大き過ぎてぶっ倒れる事態になったしな。高熱に魘されている間、才……お前の事ばかり考えていた」
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