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第36話
「御呼びで御座いましょうか」
「ルース!俺のことうちに帰す気がないって本当!?そんなの聞いてない!」
「ルース、才に着替えを用意しろ。ちゃんとした服だ」
「早くうちに帰らないと母さん達が心配するし、お見舞い終わったらすぐ帰るつもりで来たんだよ!帰してくれよ!」
「これから才は俺と同じ部屋で過ごす。準備は任せたぞ。邪魔だ早く行け」
「え?ちょっとマリー!勝手に決めないで!なんだよそれ!」
マリーの腕の中から逃れようにも力が強くて抜け出せない。
しっかりと抱きしめられていて暴れるだけ無駄だった。
「かしこまりました。才様、大変申し訳ございませんが、あちらへと繋がる扉が残念ながら現在使用することができません。暫くこちらで生活していただくことになります。マリー様のお部屋でしたら防犯対策も万全で安全ですので、安心してお過ごしいただけることかと思います。間違いなしでございます!只今着替えを用意して参ります!失礼」
にっこり笑顔でルースは立ち去ってしまった。
去り際に若干スキップしてたのが何だか気に入らない!
扉が使えないってどういうことだよ!
絶対嘘だろ!
ここでこんな世界遺産みたいな場所で?生活するなんて意味がわからない。
「ここで……って……ここ……」
「そうここで……ここで毎日俺と一緒に寝起きするんだ。必要な物があったら何でも言って……?」
「……っ!」
マリーに至近距離でそう囁かれ、はむ……っと唇が重なった。
突然のこと過ぎて抵抗することもできず、唇の柔らかさがやけに印象的に残る。
だ、だけど!
「な、何するんだよ!やめて!」
「別にキスくらいいいだろ?本当はもっとこの先もしたいくらいなんだけど?駄目か?」
「だ!だだ駄目っ!絶対駄目!そんなことしたらマジで俺怒るからな!」
「……はいはい」
「はいはいって!わかってんの!マリー!」
「わかってるよ。才から誘われるの待ってればいいんだろ?」
「!!」
サラサラした長い前髪をかきあげながらマリーが微笑む。
美しくて艶っぽいマリーの顔にドキドキしながらも、そんな誘惑に負けるものかと自分を奮い立たせた。
マリーのことは好きになんてならない。
ならないからな!
こうして俺の異世界でのおかしな生活が始まった。
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