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第41話

「せ、戦闘力……ですか?」 「そう、我が国において必要不可欠な能力だ。その先陣を切っているのがマリー王子に他ならないのだが、いつ死んでもおかしくない戦場へ自ら進んで行かれる。マリー王子の命尽きればこの国も終わりだと言うのに、あの御方は聞く耳持たずお好きな殺戮ばかり繰り返す……おっと、これ以上はやめておこう。ルースの機嫌が悪くなるからな」 「……」 「マリー様は殺戮がお好きな訳ではありません。意味があってなさられていることは明白でありますのに、殿下はいつもお言葉が過ぎます。」 隣にいるルースの声がワントーン低くなり、この場に緊張感が漂い始めた。 え、殺戮って……何? 「……ふ、お前のそういう表情も嫌いではないが、止めておこう。そちらの可愛い子を不安にさせてしまうからな。……して、名は何と?」 「え!あ、才と言います」 「才か……ふむ……才よ、またお会いしよう」 何だか足の爪先から頭まで舐めるように見られ、シャラという人は立ち去って行った。 「……ルース、あの人は誰?」 「国王陛下の弟シャラ殿下です。才様、早く部屋へ戻りましょう……」 「うん」 口調や声のトーンはいつも通りに戻ったけど、どことなくルースがイライラしているように思えた。 ルースの態度も気になるけど、それよりも戦って?殺戮ってなんだろう…… この国はもしかして戦争しているのか? マリーの自室へ戻るなりルースへ聞いてみた。 「ねぇルース教えて?マリーは戦争に行ってるの?公務ってそういうのはそういうこと?この世界ってこの国は……殺戮って……」 「才様、落ち着いてください。御話し致しますので落ち着いて。先ずは才様、先ほどのシャラ殿下の話を全て鵜呑みになさらないでください。それと彼には十分気を付けて……」 「気を付けてって?」 「はい。あの方はあまりマリー様のことを好意的に見ておられません。マリー様の才能が羨ましいのでしょう。シャラ殿下も好戦的な軍人ですが、マリー様のように万能な暗殺能力はごさいません」 あ、あんさつ……?

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